Gallery PINBOKE

私たちはしばしば、生活の中で感動的な光景に出会う。 その光景を、自分なりにレンズにおさめて楽しんでいる。 たとえ、へたであろうが、ピンボケであろうが…
 
2007/10/17 21:32:29|その他
山紀行「奥穂は遠し」@

山のベテランに誘われて秋の奥穂高岳に登った。
「ちょっと上高地の上の方まで行ってくるよ」と、軽い気持ちで家を出たのだが、3,190メートルの標識を目の当たりにして、よくぞここまで登ったものだという快感と、無知がゆえにできたという怖さが五体を走った。
 とにもかくにも、大正池から歩くこと18時間、一泊二日の山行は、山には素人の私にとって画期的な出来ごとであった。

●懐かしの上高地
 沢渡に車を乗り捨て、低公害バスに揺られること40分余り、車窓から眺める景色は異国のものに変わっていた。「こんなに素晴らしい大正池はめったに見られませんよ」。車掌のアナウンスに、乗客のほとんどが終点の上高地まで乗らずにここで下車した。我々も計画外だったが、この絶景をレンズに収めたいという私の我がままに、パートナーが妥協してくれた。バスのなかで見つけておいた撮影のポイントまで取って返した。
 そこにはところせましと三脚が並び、カメラマンがシャッターチャンスを窺っていた。紅葉した木々や山々が、微動だにしない水面に映し込まれ、池を渡る鴨の親子のつくる波紋が美しさをいっそうにしてくれた。数コマほどレンズに収め、上高地へと歩を進めた。上高地には三十数年前に来たことがある。その思い出の道は、舗装されていて定期バスや観光バス、タクシーが我がもの顔で走り去って行く。なんともやり切れない思いがした。快晴だというのにときおり小雨がぱらついた。不思議な現象に天を仰ぐと、木々の葉に降った霜が日の出とともに解け、光っているのが見えた。犯人はまさしくこれだった。
 上高地の空はどこまでも青く澄み切っていた。空腹も忘れ、そちこちで立ち止まってはシャッターを切った。程なくして河童橋に着いた。早朝だというのに人の波。道路網が整備されたこともあろうが、どうしてこんなにも人が多いのか不思議に思た。橋越しに穂高連山が威厳高く聳え、切り取って持ち帰りたい思いに駆られた。
 久し振りに背負うザックの心地よい感触に酔いしれながら、梓川沿いの緩やかな勾配の道を進む。上高地観光のプロムナードコース終点明神池への道は、銀ぶらでもするかのような格好の観光客がひっきりなしに往来していた。一杯機嫌の中年男性、娘に手を引かれるお年寄り、若いカップルなどと千差万別で、ほとんどは旅行業者が募集した観光ツアーのようだった。
 「明神池」に着いのは8時半。一休止思ったが、大正池で懲りたのか、しきりに時間を気にする相棒を気遣ってやり過ごすことにした。(つづく)
 
 写真は上から「鏡面を飾る穂高連山」「焼岳と残月」「早朝のランデブー」「樹上の霜」





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