3月22日 前日から降っていた雪が止んで、夕方には青空が見えてきた。外に出ると、雲の上に雪を被った富士山が、傾きかけた陽射しに映えていた(写真1)。
3月28-29日 大阪から小淵沢まで荷物(100号相当の日本画)を運ぶために、新大阪駅近くのトヨタレンタカーでワンボックスカーをレンタルした。直帰するのも芸がないので、寄り道して蒲郡の西浦温泉に一泊した。小淵沢ではまだ桜の蕾は小さいのに、旅館の部屋のベランダから見える景色は春爛漫だった。
蒲郡から小淵沢までは、多治見-飯田の中央道コース、豊川-飯田の天竜川コース、富士宮-精精進湖の富士山麓コースなどが考えられるが、富士山を西側から間近に見るのが魅力で、富士山麓コースを辿ることにした。
このコースは色々と見所があるが、レンタカーを返す時間もあるので、よそ見はせずに富士本宮浅間神社にだけ立ち寄った。ここでも桜が満開だった。富士山の湧水が湧き出る湧魂池(わくたまいけ)では、鴨がしきりに逆立ちして藻を食べていた。小淵沢から見る富士山は、日本画などによく描かれるように、頂上部分が水平になっているが、神社の境内から見る富士山は、山頂が少し尖って見える(写真2)。最高峰の剣ヶ峰か。
浅間神社の前後の道すがらに見える富士山は、山頂から右の方に裾を引き、雪線の少し上で宝永火口の高まりがアクセントをつけている。実に優美である(写真3:残念ながら車中から撮った写真しかない)。浮世絵に描かれた富士山を検索してみると、広重の「三保の松原」と「原」の富士山に小さく遠慮がちに宝永火口が描かれている。特に「原」からは火口を覗き込む角度で見えたはずだが、実際より山頂近くに小さな出っ張りがあるだけだ。北斎の「神奈川沖浪裏」でも、ごくわずかに稜線にふくらみが認められるだけである。美的感覚から避けたのだろうか。あるいは御神体だから傷は隠したのか。筆者は、しかし、上述の富士宮から見る富士山の姿が気に入った。フランスの絵画に似たようなシルエットがあったように思って検索した。どうやら、ダヴィッドのレカミエ夫人(写真4)がイメージに近そうである。膝の出っ張りが宝永火口というわけだ。
富士宮から139号線を北上して富士山の西斜面に近づくと、正面に大沢崩れが見える。1000年ぐらい前から崩壊が始まり、現在も続いているらしい(国土交通省富士砂防事務所HP)。
甲府南から中央道に乗って、5時頃小淵沢に帰りついた。やっぱり桜の蕾はまだまだ固い。