われわれは現代の人間がいかにいろいろの形で疎外されているかを知らされている。現代は大げさにいうと「人間疎外の時代」ともいえそうである。マス・コミ、 マス?プロ、オートメーション、原子力の開発、電子精密機械というような巨大な技術の網があり、それによる人間の機械化と画一化、その中における人間のアトム化と相互のよそよそしさ、こういう事実は誰でもじかに感じとることができる。人間は巨大な機械と技術のメカニズムに組み込まれるとお互いにアトム化された個人に分離してしまう。たとえばマス?コミの洪水の中では、人と人とは大きくつながっているようにみえて、じつは互いに疎外されているのである。一つの組織の中における成員と成員の関係も同様である。 すべてこれは、人間の労働ならびに労働による生産が商品化され、物化されているという現代の特徴を反映しているものである。現代は巨大な商品生産の時代であるといわれる。人間の精神的?肉体的な労働力そのものまで商品化されていることは、生産労働者の労働力はもちろんのこと、知識人のアルバイトが、その内容の価値を別として、いっぱんに商品化されていることからも推測できる。マス?コミの巨大な氾濫の中で、各人は却って全体的なコミュニケーションを失うという皮肉も、商品化の事実と関係している。 |