バッティングセンターは通常、2つのエリアに分かれております。「バッティングエリア」と「待合いエリア」です。今回は後者のお話です。
ファミリーやカップルなど、複数でご来店いただいた場合、1人がプレイしているとき、もう1人(あるいはそれ以上)は、それを見ながら待つことになります。その待っている人たちを「いかに快適に過ごさせるか」ここを徹底的に考えました。なぜそう思ったのか? 実は苦い思い出が引き金でした。
リニューアルする前の建物は老朽化が激しく、既に40年以上経過した建物でした。強い雨には雨漏りが、冬にはすきま風が、イスはパイプ椅子やベンチシートで、穴が開いてボロボロ等々、待っている人には過酷な環境でした。あるとき、親子でご来店されたお客さまが、こどもだけ車から降りて、ご自身は車から降りてきません。こどもはひとりぼっちで黙々と打っていましたが、誰も見てくれないのでとても淋しそうでした。そこで私は声を掛けました。
私:「お母さんは見ないの?」
こども:「車のほうが居心地がいいんだって」
私:「……。」
全国のバッセンを約80か所視察し、「待合いエリア」の形態を見てきました。見えてきたのは、どのバッセンも「バッティングエリア」には力を入れているが、「待合いエリア」はどこも似たような風景でした。スチール製のベンチシートや、丸テーブルにパイプ椅子のセットだったりと、長時間の使用には不向きでした。
ところが、視察したバッセンの中に1か所だけとても印象に残ったバッセンがありました。それは「バッティングエリア」がよく見れるように、床から1段高くしたスペースにイスと机を配置したバッセンでした。そこに座っているお客さまは、とても居心地がよさそうに飲み物を口にしていました。
「これだ! これをもっとバージョンアップしよう…」それをヒントに目指したのが「スタジアムのVIP観覧席」です。
➊前列はベンチシートで、座面に芝生調の分厚いカーペットを敷き、座り心地を良くしました。
➋後列は床から2段高くし、カウンターテーブルと座り心地の良いダイニングチェアを配置し、カフェとして飲食できるようにしました。
➌2段高くしたスペースに分厚いカーペットを敷き、靴を脱いで利用するお座敷スタイルにしました。
➍2段高くした階段部分を反対サイドにも設置し、ベンチシートとして卓球の観覧等に利用できるようにしました。
➎電源およびUSBコンセントを等間隔に配置するとともに、Free Wi-fiを設置しました。
ただ打つだけのバッセン(つまりバッティングエリアの充実)では生き残れない。バッセンだからこの程度という「待合いエリア」の慣習に捕らわれない。バッセンだってきっとできる。お客さまの満足度というモノサシを持つことを……。