6月17日の自分の誕生日に、 初めて載せた、オリジナルの童話― 『バッスくんのなみだ』
前置きばかりが長くって、 さわりの、さわりの部分しか 載せる事ができませんでした(>_<)
2回目の今日は、 もう少し長く、お話しの方を載せます(^_^;)
では、前回の振り返りから・・・
柳の木の下で、 じっと上を向いているブラックバス―。 このブラックバスこそ、 バッスくん― なのですが、
誰もが怖がるブラックバスと並んで泳ぎながら、 しつこく何をしているのか質問して来る、 鯉のプーカにイラつきながらも、 じっと待つ事をやめません。
そのうち、真上でせわしく鳴いていた、 一匹のアブラゼミが、 水面に落っこちて来ました・・・
以下、本文のままです。
ばっしゃん。バクッ! あっという間の早技だった。
バッスくんは 一瞬身をひるがえすと、 あっという間に、そ のセミを一口で食べちゃったんだ。
「すごいね。初めて見たよ。お腹が減って たんだね。」
「そうでもないけど、セミも食わないと こ こじゃ生きていけないからな」。 って、バッスくんは言った。
その目が、ち ょっと悲しそうだったのを覚えてる。
「オレはな、ここで生まれたのに、 ここに いる誰もがオレを避けて暮らしてるんだ」。
「でも、ぼくはここにいるよ」。
「だから、変わったヤツだってことさ」。
「それは、きみがブラックバスだから?」
「ああそうさ。何でも食っちまうってな。 このでっかい口で、さっきセミを食ったの見 ただろ。 だからみんなオレを怖がる・・・」。
「あのさ、 きみのご先祖さんは外国から来 たんだったよね」。
「そうだ。良く知ってるな」。
「前におじいちゃんから聞いたんだ」。
「おじいちゃんも、 バスを見たら逃げろっ て、教えてくれたんだろ?」
そうぼくに言うと、また悲しい目をした。
「違うよ。みんなここに住んでる仲間だか ら、 仲良くしないとダメだぞって、教えてく れたんだよ」。
「いいおじいちゃんだな」。
「今度、会わせてあげるよ」。
「ホントか?おまえ、オレと仲良くしてく れるのか?」
「もちろん。バッスくんって呼んでいい? ぼくの名前はプーカ。鯉だからね。」
バッスくんとの出会いはこんな感じだった。
ここは、町はずれにあるかんがい用の池。
この町の人は、 この池の事を『鯉 池 (こいいけ )』って、呼 ぶらしい。
昔から鯉がいっぱい居たかららし いけど、 今では色んな生きものが一緒にここ で暮してる。
たまに釣り人が来るけど、とて も平和な池だ。
その中でも、ぼくのおじいち ゃんは長老で、 「鯉池の主」って、呼ばれて る。
この池ができた時から生きて来た。
その おじいちゃんに今日はバッスくんを紹介する。
「おお、おまえがバッスくんか? プーカか ら友達になったって聞いておるよ」
と、自慢の長いひげを胸びれでなでながら、 バッスくんにこう言ったんだ。
「おまえのご先祖さんは苦労したのう」。
そしたら、急にバッスくんの大きな目から、 涙がポロポロとこぼれたんだ。 ぼくは驚いた。
なぜって、 こんなに泣いちゃうなんて思って もいなかったから。
おじいちゃんから聞いた 話しをしようと思う。
落っこちて来たセミは、 バッスくんのごはんでした。
ブラックバスは、昆虫も食べます。 蛾やセミが水面に落ちると突然水を割って、 ブラックバスが捕食するシーンを、 見たことがある人はいらっしゃると思います。
盛夏の木陰(シェード)で、 『虫パターン』と、 呼ばれるルアーを使う人がいますよね。
この時バッスくんは、 セミも食わなきゃ生きていけない・・・ と、思わずプーカにこぼします。
バッスくんの少し哀しげな目を見たプーカは、 自分のおじいちゃん(鯉池の主)から、 この池の全部の生きものたちと仲良く・・・ そう云われている事を告げます。
プーカにとってバッスくんは、 怖い存在では鼻からなかったんですね。
そんなプーカに心を開いたバッスくんは、 友だちになってくれるのか・・・ と、恐る恐る聴くわけですが、 プーカの答えは、もちろんYES
こうして、 鯉とブラックバスの奇妙な(?) 友情関係が生まれます。
そしてプーカは、 バッスくんとの約束を果たすために、 おじいちゃんに会わせます。
長く生きてきたおじいちゃんは、 ブラックバスが日本に来た事情も知っていて、 「苦労したのぉ・・・」 と、日本に居るブラックバスのことを労ったのです。
その言葉に救われたバッスくんは、 突然、ポロポロと大粒の涙をこぼしたのでした。
次回の展開では、 ブラックバスが日本に連れて来られた理由と、 悪者―。と、虐げられて来た過去と、 現状がプーカから語られます。
自分は、決して外来生物問題を、 軽んじている訳ではありません。
只、事実も知らないまま、 悪者にされ続ける外来生物が不憫でなりません。
そして、その度に悪の元凶にされるのが、 何故か釣り人だと云う事にも憤慨しています。
どの遊びにもマナーが守れない人はいます。 けれど、総じて釣り人が・・・ と、揶揄される事は、侮辱でしかありません。
人の都合で連れて来られた外国生まれの生きもの― 批判されなければならないのは、 生きものではなく、人間であるべき―。
こんな、ご都合主義の外来種問題に、 一石を投じたいのです。
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