今年もまた、7月に大規模な豪雨災害です。 被災された皆様に、 心よりお見舞い申上げます。
特に熱海での土石流災害は、 唯々、恐怖でした。
あの辺りと、海沿いの道は何度か行った事もあり、 映像を見ているだけで足が震えました。 まだまだ予断が許されない状況でしょうが、 なんとか心を強く持って支援を待って下さい。
災害の翌朝に恐縮ではございますが、 今日の投稿は、オリジナル童話の続きです。
前回、コイのプーカはお祖父ちゃんから聞いた、 バッスくんのご先祖さん達が受けてきた仕打ちに、 深い悲しみを覚えました。
コイは雑食です。 お腹が減れば、他の生きものを食べてしまう事はある・・・ でも、日本で当たり前に棲んでいるコイは、 バッスくん達みたいに、人からいじめられない。
お祖父ちゃんは、 そんな矛盾を心得ているから、 どんな生きもの達とも仲良くしなさい―。 そうプーカに伝えていたのです。
プーカとバッスくんとの友情は、 更に深まって、周りの生きもの達も、 次第にブラックバスへの恐怖感が、 なくなっていくのを感じていました。
そして、再び巡ってきた夏― いつも様に、鯉池の畔に生える柳の木の下で、 セミの落下を待っていました・・・
『バッスくんのなみだ』は、今日が最終回です。 前回の締めくくりで、 バッスくんが、ある悲劇に襲われる― って、予告しました。
一体、何があったのでしょう!? 想像が付いた人もいるかもしれませんね。
では、『バッスくんのなみだ』最終回をどうぞ・・・
あの日も二人で柳の下で、バッスくんと遊 んでいた。 出会った時と同じ暑い日で、 セミ が上でうるさく鳴いていた。
その時だ。 ポシ ャンってわずかに上で音がしたと同時に、 セ ミに似た影が見えて、水面でパシャパシャと 羽を動かすような音が聞こえた。
バッスくん は、あの日と同じように、 一気にセミに向か って行って、 ばっしゃん。バクッ。
「危ない」って、 叫んだ時には遅かった。 ルアーだ。
ぼくも一度、引っ掛かっちゃった 事がある。 バッスくんは必死にハリをはずそ うともがいたけど、 やがて諦めたように、動 きを止めて、 ぼくの視界から消えた。
「だめだよ。バッスくん、行かないで。」 それから十分くらい経っただろうか・・・
ゆら ゆらと力なく バッスくんは、ぼくのところに 来た。
ずいぶん弱っていた。 手で握られたの か、ひどいやけどもしていた。
「プーカ、オレはもうダメみたいだ。 最後 にお礼を言わしてくれ。 友だちになってくれ てありがとうな。 とっても楽しかったよ」。
目にいっぱい涙をためてぼくを見て笑った。 「ダメだよ。まだ大丈夫だよ」。
一生懸命に励ましたのに、 あの穏やかな笑顔 が忘れられないよ。 ぼくの方こそありがとう。
あの日からまた月日が経った。 ぼくは、か なり大きくなって、 ひげもずいぶんと立派に なった。
今日もあの柳の下で、 やんちゃなバスの 子どもたちが元気に遊んでいる。
「ルアーに気をつけなよ」。
「うん。プーカ兄ちゃんありがとう」。
ぼくとバッスくんの姿を見て、 この鯉池は 前よりもっと平和になった。
バスを見て逃げ る仲間もいなくなった。 バッスくんのこぼし た涙は、この鯉池に溶けて みんなを元気にす る泡になった。
今日もセミがうるさく鳴いて いる。 命はこうやってつながっている。
おしまい
さあ、いかがだったでしょうか。 バッスくんが飛びついたのは、ルアーでした。 プーカは、たたそれを見ている事しか、 できませんでした。
目の前で、友だちが苦しくてもがいています。 でも、声を掛ける事くらいしか、 できることはありませんでした。
自分は釣り人です。だから、 自分が選んで使ったルアーに、バスが食いつけば、 これは、してやったりです。 きっと、笑顔になってる筈です。
バスの強い引きを感じながら、 そのやりとりを堪能するでしょう。 間違いなく・・・。
でも、その間に確実にバス(魚)は、 体力を消耗していきます。
更に取り込みの時に、 魚を素手でわしづかみなんかにしたら、 人の体温は、魚にとっては大やけどする温度です。
そんな時にリリース(再放流)をしても、 その先、釣った魚が生きながらえる可能性は、 極めて低いと思って下さい。
酸欠と、やけどで、 元には戻らず、バッスくんと同じ様に、 底に沈んで死んでしまうでしょう。
魚釣りと云う遊びは、そういう遊びです。 お前が言うなと言われても、敢えて言います。 魚にとっては、身勝手で、残酷で、 このうえなく野蛮な行為です。
だからこそ、バスに限らず、ギルにだって、 どんなに小さな雑魚にだって、 その命にちゃんと向き合って、 絶対に粗末に扱ってはいけないと思っています。
フライフィッシング然り、 ルアーフィッシングも然り、 キャッチ&リリースは、自然に優しい釣りだ・・・ なんて、あり得ません。
魚に「ありがとう」と、声を掛ける人を見ますが、 声を掛けるとしたら、「ごめんなさい」を、 先に云うべきでしょう。
只、魚に対してリスペクトの気持ちで、 声を掛けているのであれば、理解はできます。
そんな事もあって、 基本、自分は食べない魚は釣らない―。 様に心掛けてはいます。
でも、直ぐに海に行けなかったり、 コロナ禍で、遠くに行けない時には、 普通にフナやコイを釣りました。 ブルーギルも釣りましたね。
命の犠牲の上に命があるなら、 釣った魚の命を、感謝して戴いて、 少しでも供養になるのであれば救いです。 さりとてこれも欺瞞ですね。
そして、人間が食物連鎖に加わって居る事に、 気付く事ができれば、 生き物の繋がり―。にも、気付けますから・・・
全ての生きもの達が、 互いに繋がりあって、この地球で生きています。 幾つもの死が、幾つもの生を繋げています。
全ての命にリスペクトする気持ちで、 これからも、釣りを続けていこうと思っています。
さて、昨年のステイホーム期間に、 自分が書いた童話は、他にもあります。
また、機会を見つけて紹介できたらと思います。 『バッスくんのなみだ』を、 最後まで読んで下さった皆様に、 心から感謝申上げます。
ありがとうございました。
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