こんにちは。
アートギャルリー日本ぶっくあーと、見習い16年目のmayumiです。
前回のブログは、
山梨県立美術館のイチョウの写真で話を終えてしまいました。
今回は本題、『花の画家 ルドゥーテのバラ展』のお話。
ルドゥーテについて少しやっかいなお名前ですよ。
ローマ字入力でミスを連発しちゃってます。
「ドゥ」は「dwu」。
でも、ついつい「du」とタイプして
ルヅーテに。
使いなれない言葉は、つらいっ...
以下間違いがあったらごめんなさい。
さてさて...ピエール=ジョゼフ・ルドゥーテ。
1759年生まれ・ベルギー出身の植物画家です。
世界史でおなじみのフランス王妃マリー・アントワネット、
およびナポレオン皇妃ジョゼフィーヌにおつかえした、
と聞けば「あの辺の時代の人ね」
なんとなくお分かりになるかもしれません。
(ちなみにその頃の日本は江戸時代。1760年には葛飾北斎が生まれています。)
図鑑の植物やお花の挿画「ボタニカル・アート」ジャンルでは、
とっても有名なお方であります。
近年、東京をはじめ全国各地で、ルドゥーテの展覧会が実にひんぱんに
開かれていますので、ご存知の人も多いことでしょう。
また、各種お花グッズや「大人の塗り絵」などで見たことがあるかもしれませんね。
バラ図譜についてルドゥーテは多くの植物図譜を出版しました。
なかでも最高傑作として知られているのが、
彩色銅版画集『バラ図譜(Les Roses、1817-24年) 』。
『バラ図譜』とは、つまりバラ図鑑、バラ大百科ですね。
描かれているのは、ナポレオン皇妃ジョセフィーヌが世界中から集めたバラのうち169種。
植物大好きの皇妃は、自身の居城(マルメゾン城)に巨大庭園をつくったほどですが
とりわけバラへの愛は強く、新種をふくめ世界中から250種ほどコレクションしていたとのこと。
200年以上前のことですよ...びっくりですよね。
それらをぜひ、というルドゥーテの提案により、作成されたのが『バラ図譜』(全3巻)です。
残念なのは、1817年に初めて出版されたとき、皇妃は天に召されたあとでした(1814年没)。
(山梨県立美術館 正面玄関入口です)
山梨県立美術館の展示について『バラ図譜』から全169点と、とびら絵(『リース』)の計170点。
加えて、関連作品3点と肉筆画4点が、淡々と展示されています。
展示室は、赤・白・黄色・ピンクのバラ、バラ、バラワールド。
図譜に描かれたバラの系統は、
- ガリカ、
- ダマスク、
- アルバ、
- ケンティフォリア、
- モス、チャイナ(インディカ)
- ポーランド、
- ブルボン、
- ノワゼット、
- ブールソー...。
(ふぅ、ここでひと息)
そしてこれらに、アジア・欧米の野生種とその派生種が加わります。
とてもじゃないけど、覚えきれぬ。
とにかく...スミレのようなものあり、コスモスのようなものもあり、
シャクヤクのようなものもあり...なのです。
なかには、現存していない品種もあるとのこと。
最後のコーナーには、絵本をもとにつくられた「ルドゥーテ物語」の
かわいいパネルがあり、画家の生涯をわかりやすく学べます。
作品について「植物画の天才」の絵ですからね、それはそれは正確な描写。
いえいえ、「正確」とひとこと終わらせてしまっては恐れ多い。
精緻な描写と絶妙な色づかいから、リアルに伝わってくるのです。
うすい花びらはふわっとやわらかいのだろう、こちらの葉は少し固いのかな、
細かいトゲトゲが痛そうだ、でも優しい香りがするんだろうな、とかね。
そして、これほど写実的でありながらも嫌味をまったく感じさせず、
1点1点が本当に穏やかで静か。
それぞれのバラがポーズをとっているようで、
まるで美人画を見ているような、お妃の肖像画を見ているような、
聖女や天使の宗教画を見ているような...
華やかすぎず甘すぎず、そこはかとなく上品で優しい...
そこで、ルドゥーテ作品を鑑賞するうえで、まず押さえておきたいのが
彼の用いた技法です。
ぜひ展示資料や書籍などをご一読いただきたいのですが、
スティップル・エングレーヴィング(点刻彫版法)という銅版画技法。
イタリア彫版工職人に学び、さらに自らのアレンジを加えて駆使したこのテクニックは、
細いニードルを使って無数の点を彫り、花びら・茎・葉を描くという、神わざ。
通常の銅版画にみられるハッキリとした
「輪郭線を可能な限り排除し、 きめ細かな色彩の濃淡によって自然な花々の美しさを表現」
とのこと。
点々で描く「点描画」技法ってありますよね。
絵筆でトントントンも大変なのに、それを銅版画でやってしまった...
ひたすら小さな小さな点を彫る、気が遠くなるような方法です。
でもそのこだわりこそ、植物やお花を知り尽くした画家のプライドだったのかもしれません。
「自然の美」「植物の美」を表現するには、そうするしかないと。
いやぁ、すごい。
だから植物学的価値だけにとどまらず芸術的観点からも高く評価されるのですね。
おわりに私が行ったのは平日。予想以上ににぎわっていました。
人垣ができるほどではないのですが、 展示室にいらした皆様は、
可能な限り近寄って、くいいるようにご覧になられていましたね。
なかなか、作品の前から移動されない。
構図、描写、色づかい、超絶技巧...ルドゥーテの繊細な絵は近くで見たいものです。
しぜんと1点あたりの観覧時間が長くなる、そう、これは仕方がない。
版画と肉筆画とあわせて180点近くありますから、
ぐったりと疲れないようペース配分にお気を付け下さい。
ちなみに私は、30分鑑賞。
見放題になる定期券を購入していますし(ミュージアム甲斐in券)、
美術館と職場とは車で10分ぐらいの距離ですから
出勤前かお昼休みに数回足を運んで楽しみます。
(1回につき30〜45分、これを3回ぐらい)
さてさて、銅版画ではないものの「輪郭線がない」という言葉に
レオナルド・ダ・ヴィンチの「スフマート」を思い浮かべた私。
「モナ・リザ(1503〜1519年頃)」に見られる、線または輪郭を用いずに
煙のようにホワンと柔らかにぼかす技法です。
また東洋絵画にも、同じく輪郭線を表さない「没骨(もっこつ)」という描写法があります。 スフマート、スティップル・エングレーヴィング、没骨...
確かに輪郭の有無で、与える印象の違いは歴然。
そういえば、私の顔も輪郭線がなくて、ホワンとボケています。
キリッとした輪郭、ほしいな。
アートギャルリー日本ぶっくあーと、見習い16年目
mayumi
2015.11.18.
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【 「花の画家 ルドゥーテのバラ」展 】
◇山梨県立美術館: 住所: 〒400-0065 山梨県甲府市貢川1丁目4−27
電話:055-228-3322
◇会 期: 2015年11月3日(火・祝)〜2016年1月17日(日)
◇開館時間:午前9:00〜午後5:00(入館は午後4:30まで)
◇休館日: 11月16, 24, 30日、12月7, 14, 21, 28〜31日、1月1, 4, 12日
◇観覧料: 一般1,000円 大学生500円
20名以上の団体、 一般840円 大学生420円
山梨県内ホテル・旅館宿泊者割引料金 一般840円 大学生420円
※以下の方は無料です
小学校、中学校、高等学校、特別支援学校の児童・生徒
山梨県内在住65歳以上(健康保険証等持参、県外の65歳以上の方は常設展のみ無料)
障害者手帳をご持参の方はご本人と付き添いの方1名