ご報告が遅くなり、大変申し訳ありません。 すでに新聞記事等でご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、先週末、大阪府池田市で開催されました「第12回社会人落語日本一決定戦」において、第3位という、過分な賞をいただきました。 これもひとえに、日ごろから応援し、支えてくださっているお客さま、そして仲間、家族、親戚、 通りすがりの人のおかげと、心から感謝しております。
披露したのは創作落語。2年前、落語仲間で落語作家でもある「微笑亭さん太」さんに、移動スーパーをテーマに書き下ろしてもらった作品でした。 昨年8月、さん太さんと、やはり落語仲間の「参遊亭小遊」さんを小淵沢にお招きして、ホールで落語会を開催させていただいた時、初めてこの作品を聴かれた小遊さんから、めっちゃ熱心に「決勝進出を目指せ!」と叱咤激励いただきました。おかげで、それまでちっともそんな気が無かったワタシに、ちょっとだけ欲が湧いてきました。
けど、まだいうても夢の話やなと思ってました。 ところがなんと、その1か月後。 山落語仲間の「参遊亭遊若」さんが、第11回大会で見事優勝!! いつも一緒に落語やってる遊若さんが、第十一代名人となられたことで、それまでまったく雲の上のタイトルやったのが、ほんの少しだけ身近に感じられるようになりました。
ただ、決勝を目指すには、まだまだ作品のインパクトが足りません。 コロナがだんだんと猛威を振るうなか、予定していた落語会も次々と中止になり、お客様の前でかけさせていただく機会もないまま、さん太さんのお許しを得て、今ふうにアレンジを重ね、とりあえずもなんとか形が出来たのが1週間前。 はしば文庫で、初めてかけさせていただきました。 そこでいただいた反応をもとに、さらに手をいれて池田の予選会に臨みました。
そしていよいよ予選会場。 不思議にわりと落ち着いていました。 やることはやった。あとは、落ち着いて、楽しみながら演じること。
予選の高座は、もぉ幸せのひとことでした。 客席には、歴代の名人・歴代の決勝進出者・落語仲間の皆さん・・・。 ほかにいくつも強豪が出ておられる会場があるのに、みな、ワタシの噺を聴きにきてくれてる・・・。 落語やってて、こんな幸せなことはありませんでした。 会場の雰囲気もあったかく、最初から最後まで、めっちゃ気持ちよく演じさせていただけました。 これでもし決勝に行けなくても、もうじゅうぶん幸せやと思いました。 それなのに、なんのご褒美か、まさかの決勝進出。
池田には、やはり落語の神様がいました。
じつはこの日、例によって車で大阪入りし、早朝には会場についていました。 駐車場も事前予約でストレスなく確保でき、ビリケンさんにも願掛けし、池田城址公園の天守閣で稽古、五月山公園散策とともに、歴代名人の植樹された記念樹にごあいさつ。 どれもこれもその場の思い付きで行動したのに、すべてが流れるようにスムーズでした。 天気は快晴。 あまりにも良い気が流れてるように思えて、つい太極拳の型の稽古をやってみたりしました。
決勝の日。 前日の予選会にくらべ、ひとりになって集中できるスペースが少なく、気持ちを整えるのにちょっと苦労しました。 ましてまわりは、全員決勝進出を果たしたツワモノぞろい! 自分の出番が来るまでは、聴けば絶対自信を無くすので、極力聴かないように、楽屋の外の冷たい廊下を、檻の中のクマのようにウロウロしたりしてました。
決勝の高座は、もうただ無我夢中でした。 コロナ感染防止対策により、1,000人は入る客席も心なしかまばら。 そのなかで、とにかく最後までやりきりました。 直後の講評では、審査員で「よせぴっ」編集者の日高美恵さんから、もったいないくらいのお褒めの言葉をいただき、「これで終わったぁっ!」と袖に戻りかけたら呼び止められ、そのあと桂文枝師匠からご講評をいただけることを知らなかったワタシは、慌てて舞台へ戻りました(爆)。
じつはこのあとが、今大会で、ワタシの一番の宝物となった時間でした。
文枝師匠から、作品の経緯についてご質問いただき、一生懸命無いアタマをしぼってお答えしているうちに、なんだか文枝師匠と掛け合い漫才のようになってきて、客席はドカンドカン受けるし、ネタやってるときはこんなに受けんかったのに・・・と戸惑いながら、これって「新婚さんいらっしゃい!」やなと思ったり。 そのうち時間もどんどん経って、「えぇっ?まだしゃべっててええのっ!?」とか、余計な思いが頭をよぎりながら、けど、あの文枝師匠から、こんなに絡んでもらえて、ウソみたいな、夢のような時間でした。
けど、最後の最後、「では最後にお聞きしますが・・・」と、文枝師匠がネタふってくれたのに、テンパってたワタシはまんまとそれに気づかず、とんちんかんな返しをしてしまいました・・・(轟沈!)
あそこでうまく返せるのが、名人なんでしょうね、きっと。 後で気づいて、撃沈してるワタシはマダマダと、自分の力の無さと、お笑いの怖さを思い知らされました。(・・・そんなんウマく返せたら、とっくにプロになってるわいっ!・・・と心の声w )
結果発表で、いきなり「第3位・・・引き売り屋を・・・」と名前を呼ばれたときは、思わず天を仰ぎました。 「がんばった・・・、カミさんとふたり、寝る時間も削ってがんばってきた努力が報われた・・・」と、なんかものすごく、肩の荷が下りた気がしました。
とりあえず、大会の感想はここまで。 長文たいへん失礼しました。まだまだ書きたいことが出てきそうなので、ここらでいったんひと区切りとさせてください。
最後に、今回はコロナ禍での開催でもあり、感染防止対策には最大限の注意を払いました。 公共交通機関は一切使わず、移動はすべて自家用車。池田市に入ってからも、定宿のビジネス旅館とその前のコンビニ以外は一切立ち寄らず、お土産のひとつも買えませんでした。 1日も早く、以前のように、皆で肩を揺らしながら大笑いできる日が訪れますように。
令和2年12月20日 第12回社会人落語日本一決定戦 第3位 酔亭化枝( 社 祐幸 )
写真は左から 山梨日日新聞12月15日版・受賞式の模様・決勝進出者の皆さんと
追記:毎日新聞山梨版にも、同日、記事にしていただきました https://mainichi.jp/articles/20201215/ddl/k19/200/156000c
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