ーーーこちらは前回の続きです。上からお読み下さい☆ーーー
それは客に威圧感を与えるための物であろう、とポチダは思っていたが、どうやらそうでもないらしい。 「よし、こんなもんだろう。」 会長は数冊本を抜き出してくると、ポチダの前にドサッと置いた。 意外と児童書っぽいのが多いな、と思ったが 「『狐笛(こてき)のかなた』、『ミーナの行進』、『ホビットの冒険』、『都会のトム&ソーヤ』・・・なんだかつながりのない本達ですね?でも、どれもおもしろそうです。」 ポチダはそう言った。児童書でもポチダの直感が『おもしろそう』と言っているのだからこれはお世辞でもなんでもない。 「ほう!チミの読書嗅覚はなかなかのモンのようだ。見直したよ。さて、これを春夏秋冬順に並べ替えるとだね・・・」 春は『都会のトム&ソーヤ』、夏は『ミーナの行進』で、秋が『ホビットの冒険』、冬は『狐笛のかなた』の順になった。 「この順にはなにか理由が?」 「もちろん!」 会長は楽しそうに言った。自分の理論を語れるのが楽しくてしかたがないようだ。 「チミ、楽しい話は春のうららかな陽の元で、美しくはかない物語は冬の行灯の下で読みたいとは思わんかね?この思いを形にしたのが『春夏秋冬の読み分け』じゃ。他にも、春には『チョコレート・アンダーグラウンド』や『しゃばけ』シリーズ、冬には『エラゴン』シリーズ、『鏡の中の迷宮』なんぞがオススメだの。あと、エンデとイーザウは夏場は読まん方が良いぞ。夏バテになる。」 ポチダは、おやっと思った。なんだか、やけに・・・ 「『モモ』のミヒャル・エンデに、『パーラ』のラルフ・イーザウ。パオリーニの『エラゴン』シリーズ・・・やけに児童書が多いですね、会長?」 すると会長はムッとした声で応えた。 「知らなかったのかね?我が社は最初児童文学のみの出版社だった。だから自然とワシも児童文学ばかり読むようになった。いかんかね?」 「いえ、とんでもありません!」 ポチダは慌てて言った。せっかく会長秘書も悪くないと思えて来たのに、ここでクビにされてはかなわない。 会長はまだムッとした様子だったが、講釈を続けた。 「ふむ、まぁいい。それでだねチミ、この『春夏秋冬の読み分け』には、一つだけ欠点がある。何だと思うかね?」 「欠点、ですね。先ほどから気になっていたんです。この方法は内容をある程度を知らないと実行できないのではないでしょうか?」 会長の顔に残っていた不機嫌さがふっとび、じわぁっと笑顔が広がった。 「その通り!チミ、なかなか見込みがあるぞ!」 「ありがとうございます。」 ガンコで有名な会長にほめられてポチダはうれしく思った。 それにしても、この人はぜんぜん噂どおりではない。確かに少し変わっているけど。 「さて、この欠点だが、ここで重要になってくるのがワシが先ほどから使っていた『読書嗅覚』だ。この能力は装丁・題名・あとがき・あらすじなどで直感的にその本が面白いか否かを見抜く能力で、これを伸ばさないかぎり『春夏秋冬の読み分け』は楽しめん。」 「そんなもの、鍛えられるのでしょうか?」 「まぁ、経験しかないの。十年も読書を趣味にしとればなんて事はない。」 「はぁ。」 そんなもんかなぁ。とポチダは思った。 でも、本が好きな人は大抵は子供の頃から好きだ。 ポチダもその一人である。十年なんてなんて事無いかもしれない。 「本好きの最終形態と言えるかもしれんの。・・・おや、もうこんな時間かね?では今日はこのくらいにしておこうかの。」 会長が、上品な高級時計を見て言った・・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 春夏秋冬本づくしの一生・ひとまず完
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