米航空宇宙局(NASA)の宇宙探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」が、7月末に打ち上げられます。
これは特殊な断熱シールドを使った探査機で、太陽への最接近を目指し、周囲にあるコロナや太陽フレア、宇宙天気といった数々の「謎」を解き明かす手がかりをつかむことがミッションだと云います。
ジョンズ・ホプキンズ大学応用物理学研究所(APL)が設計して組み立てを行い、米航空宇宙局(NASA)が運用する宇宙探査機の「パーカー・ソーラー・プローブ」は7月31日、「デルタIVヘヴィー」ロケットで打ち上げられる予定です。
パーカー・ソーラー・プローブは、太陽に向かう途中で金星の引力を利用したスリングショットを行い、最高時速は約72万4,000kmに達する見込みです。この速度なら、太陽の表面から約640万km上空にある、かすみがかった大気、つまりコロナを通過できると云います。
宇宙探査機は、これまでにない距離で最も太陽に接近。科学者はパーカー・ソーラー・プローブが収集するデータによって、地球上の通信信号に大きな被害をもたらす“太陽フレア”の発生や宇宙天気について理解を深め、予測可能に。
4年をかけてつくられたパーカー・ソーラー・プローブは、宇宙における耐用年数が7年以上とされ、太陽の謎を明らかにする根本的な疑問にも答えてくれるかも知れません。例えば、コロナは太陽の表面と比べてなぜ300倍も熱くなるのかなど。
このミッションを担当した、ジョンズ・ホプキンズ大学応用物理学研究所の主任科学者であるニコラ・フォックス氏によると「太陽の表面から離れるにつれ、高温ではなく低温になるはず。高温になる理由については諸説ありますが、太陽のなかを飛行しないと理論を検証が出来ず、また時速約160万kmで太陽から地球に向けて放出される電離した気体である太陽風が、太陽から離れるにつれ減速するのではなく、加速する理由も知りたい」と考えているそうです。
太陽風は、地球の磁場を撹乱(かくらん)して停電を引き起こしたり、軌道衛星や国際宇宙ステーションに搭載されている電子機器をショートさせたりする恐れがあるのは既知の通りです。パーカー・ソーラー・プローブが収集するデータは、こうした現象の予測に使用するモデル構築に役立つに違いありません。
NASAとジョンズ・ホプキンズ大学応用物理学研究所の科学者は、1958年から太陽の近くに探査機を送り込むことを夢見てきたそうですが、資金調達の遅れや技術的な問題などで、このプロジェクトは2014年まで構想段階にとどまっていたと云います。
このプロジェクトの工学上における最大の課題は「探査機と搭載機器を太陽の熱から如何にして守るか」というもの。パーカー・ソーラー・プローブの構造物全体は、約1,371℃の高温に耐えられるように厚さ約11cmで、炭素繊維強化炭素複合材料(C/Cコンポジット)の耐熱シールドで覆われていて、耐熱シールドを結合する接着剤などは、溶ける可能性がある資材が使用されないよう細心の注意を。
また、すべての部材がシールドで保護されているわけではないため、太陽風の角度とプラズマエネルギーを測定する直径約20cmのソーラー・プローブ・カップは、融点が2,470℃と高い希元素のニオブで作るなど、実験データをもとに最新のテクノロジーを駆使し、さらにパーカー・ソーラー・プローブが自律的に決定を下し、データを迅速に送り返す能力を向上させながら、操作する人間から離れても稼働し続けられる新しいタイプの自律制御システムも構築されているとか。
このプロジェクトが成功し、太陽フレアやコロナの謎の解明が出来るよう、関心を持って見守りたいと思います。