全天に星座は88個。今回は”かんむり座”の紹介です。
かんむり座は小さいうえに際立って目を引くほどの明るい星があるわけではないですが、うしかい座のすぐ北東に接して、7個の星がくるりと美しい半円形を描く姿は、初夏の宵の頃の頭上で妙に目につくことがあると思います。
繊細な美しさと形の良さに、酒神ディオニュソスが王女アリアドネに贈った宝冠という神話も、うなずけます。なにしろ、ひと目でそれとわかるような整った半円形だから、世界各地で注目されていたらしく、冠のほかにもいろんなイメージで見られていたと云います。
日本だけ取ってみても「鬼の釜」「長者の釜」「太鼓星」「車星」「首飾り星」、さらには「馬のわらじ」と呼ばれることも。
さて、ギリシアでは、このかんむり座にはこんな話があります。アテネの王子テセウスは、怪物を倒すべくクレタ島にやって来ました。
王女アリアドネの助けを借りて首尾よく怪物を退治したテセウスは、アリアドネを妻に迎えると故郷に向けて船を出そうとしましたが、テセウスの夢に女神アテナが現れ、「アリアドネを妻にすると災いが起こる。彼女を島に残してすぐ出発せよ」と告げたとか。
目を覚ましたテセウスは、アリアドネが眠っている間に帆をあげ、そのまま船出、行ってしまいました。夜が明けて目を覚ましたアリアドネは、ひとり置き去りにされたことを知るや否や、悲しみのあまり海に身を投げようとします。
ちょうどその時にやって来たのが、酒の神ディオニュソスの賑やかな行列でした。ディオニュソスはアリアドネから訳を聞くと、彼女を慰め、自分の花嫁として迎え、7個の宝石で飾った冠を贈り、その冠がのちに空に上げられ、星座になったと云われています。