世界がゼウスの父クロノスによって治められていた頃、世界のすべての生き物は老いることがなく、幸せに暮らしていたそうです。
ところが草木の枯れる冬が生まれ、銀の時代へと入ると、人々は食物を得るために働かねばならなくなりました。 やがて人々の間に争いが生まれはじめ、神々は天上界へと去って行きました。 しかし、人々は決して殺人だけは行わなかったため、正義の女神アストライアとその妹、慈悲の女神アイドスだけは、地上に残って人々に正義を説き続けていたのです。
アストライアは手に天秤を持っていて、争いが起こると、その当事者らを天秤に乗せて正邪を量ります。
すると、正しい人を乗せた皿は持ち上がり、邪なる人を乗せた皿は下がったと云われています。
この天秤でアストライアの裁判はきわめて公正に行われていました。
しかし銀の時代が終わり、青銅の時代になると人々はいっそう野蛮になり、親兄弟でさえも殺し合いを始めるようになってしまいます。
続く英雄の時代は、神々を敬う英雄達が現れ、以前よりいくらかましな時代になったのですが、それを過ぎて鉄の時代に入ると人々は完全に脱落し、集団で武器を取って戦争をするようになってしまったのです。 ついにアストライアも人間を見限り、天上界へ去って行ってしまったそうです。
こうしてアストライアは乙女座となり、アストライアの持っていた正邪を量る天秤が天秤座になったと云われています。 |