私たちの身体を構成する様々な元素は、初めから宇宙に存在したわけではありません。
それらは宇宙が誕生して進化する中で起きた様々な出来事のたびに、少しずつ作られて来たのです。
特に、元素周期表で鉄よりも重く身体にとって欠かせない微量金属元素は、超新星爆発のさなかで作られたことが分かっています。
つまり私たちの身体にある酸素や炭素や窒素なども、かつて星の内部で作られ、超新星爆発の現場に居合わせたことなのです。
このことから言えるのは、宇宙の歴史は、元素の進化の歴史でもある…という事。
宇宙が始まって、最初にできた元素のほぼ全てが、水素とヘリウムだったと云います。この水素とヘリウムが材料となって最初の星が生まれたと言われますが、最初の星は、私たちの太陽のようなちっぽけな星ではなく、とても大きな質量を持った種族3と呼ばれる星だったと考えられています。
この大質量星の中では盛んに水素が核融合を行い、水素からヘリウムが、ヘリウムから炭素が、炭素から酸素やネオンが…と、徐々に重い元素が作られています。この核融合反応は鉄まで進むと、そこでいちど終わります。
鉄は最も安定した元素であって、鉄よりも重い元素が合成されても、すぐに崩壊して鉄に戻ってしまう。つまり、通常の核融合反応で鉄よりも重い元素が作られることはありません。
鉄の合成まで進化が終わった星は、徐々に不安定な構造になって行き、ある限界を機に、星は崩壊を始めます。
星を形作っていた物質は全て星の中心部に向かって落ち込み、中心核で跳ね返されて、猛烈なエネルギーをもって宇宙空間に飛び散ることになって、これが超新星爆発の瞬間です。
超新星爆発のさなか、これまで安定だった鉄に変化が起きます。 次から次へと鉄にエネルギーが与えられることで、鉄に戻る間もなく、どんどん鉄よりも重い元素へと進化を遂げていき、その多くは爆発の衝撃波に乗って宇宙空間へとばらまかれて行くのです。
こうして、それまでは水素とヘリウムだけだった宇宙が少しずつ重い元素で“汚染”されていくことになるのです。
地球で見かける物質の多くは、星の内部で作られた物質と云っても良いでしょう。
特に、鉄よりも重い物質のほぼ全ては、超新星爆発を少なくとも1回は体験してきていると考えます。
これらの物質は、生命の発生には欠かせない物質でもあるのです。結論的に、生命の発生に必要な物質は、超新星爆発によって星間空間に散っていき、そして超新星の残骸は、生命に必要な元素をばらまく宇宙に咲いた大きな花でもあるとも云えます。
時として私たちが、宇宙にロマンを馳せ、魅せられるのは、そんな宇宙の成り立ちにアイデンティティを求めているからでしょう。 |