非公認で「生誕200年 ミレー展 −愛しきものたちへのまなざし−」(7月19日から山梨県立美術館)のPR活動をしている、アートギャルリー日本ぶっくあーと 見習い14年目のmayumiです。
前々回は、ポスターなどで使われている作品『子どもたちに食事を与える女(ついばみ)』の話と展覧会概要。前回からは、ミレーネタのごり押しで、私の思い出ばなしを始めました。そんなの誰が興味を持つんじゃ、という意見は全部スルーして、今回もミレーに関する昔ばなしを続けます。
授業で教わったり、テレビの特番で画家の生涯を知ったりすることはあっても、8歳で初めて見た『種をまく人』と『夕暮れに羊を連れ帰る羊飼い』の原画の印象のせいか、ムーア『四つに分かれた横たわる人体』へ抱いたような偏愛もなく約10年が経ちました。しかし1990年代はじめ、高校生のとき。フランス人画家アンドレ・バルリエ先生と山梨県立美術館にご一緒したのをきっかけに、少しずつミレー作品への意識が変わり始めます。
あ、すみません、「高校生のとき...画家と美術館にご一緒」という表現では不十分でした。エレガントに聞こえて、私を知る人物からヤジられそうですから、本題の前に補足説明しますね。
バルリエ先生は、父(弊社スチャラカ社長)がたずさわっていた巡回展「現代フランス美術展」の招待作家として、たびたび来日。ほがらかでフレンドリーな先生です。
(画像:バルリエ先生と若かりし頃のスチャラカ社長)
全国各地で長い時間をともに過ごしていたからか、お国ことばの岩手弁しか話せない父となぜか仲良し。甲府では美術展の合間に、先生と奥様を山梨観光にお連れしました。通訳なし、フランス人ふたり&岩手人ひとりの神通力コミュニケーションで、まずは富士五湖エリアの物見遊山。
しかし、自分の本拠地・山梨ということで、ガイド役がヒートアップ。車を運転しながら身振り手振りの熱い語り、つまり「ジェスチャーゲーム」はスリル満点だったとのこと。
「言葉は大事」
観光2日目にして気付いたとはいえ、フランス語ペラペラのスタッフは、お気楽な父と違って「おでかけ」するわけにもいかず、「甲府在住、緊急出動可能、先生夫妻と面識あり。しかもバイト代ゼロ円。この際、英語でも良かろう。いないよりマシ」と当時高校生の私をチョイスしたという経緯。
平日の昼まえ、父が学校に電話をして「家庭の事情で」と、常識やぶりの早退命令。
そんなこんなで強制連行されて「画家と美術館にご一緒」しました。
「先生に、これから山梨県立美術館に行くって言って。ミレーの『種まく人』『夕暮れに羊を連れ帰る羊飼い』があって、ミレーとバルビゾン派のコレクションで有名です。フランスと比べられると困るけど、山梨にも良い作品があるんですよ、って。」
「これから美術館に行きます。ジャン=フランソワ・ミレーのコレクションで有名です。パリのオルセーにもミレーの絵がありますよね 」
9歳から週1回50分間の英会話教室で金をかけ、高校でもオプショナル早朝授業まで受けていたとは思えない、すこぶる期待外れの英語力。スチャラカな父親DNAを受け継ぐ私に通訳なんてできるわけがない、むしろこれで上出来!
話はとことん自分流にアレンジし、かんたんな質問をしてやりすごすことに。先生はお話し好きなので、私はほとんど聞き役、ときどき質問。もちろん、父への通訳は省略。
この作戦は美術館でも続きます。
「これを見るのは4回目です。画家の生涯についても少し学びました。でも良さが分かりません。フランスではミレーやミレーの作品はどう思われているのですか?」と最初に発言。
するとバルリエ先生による「サルにも分かる、ミレー講義」がスタート。
「なにが素晴らしいかと言うと...」
「フランスでは...」
数分で話に飽きた奥様はあっというまに自由行動、後を追った私の父もフラフラと消失。
でも画家のトークは絶好調です。構図の特徴と特長、農民画ジャンルの地位と描くことの意味、ミレーゆかりのフランス北部の風土、そしてバルリエ先生の解釈までのフルコース、まさかの2時間。
たまに意識が遠のきつつも、私はマンツーマンのレクチャーを修了しました。
『種をまく人』にいたっては、遠くに住む親せきよりも頻繁に会っており、画家に対しても「ミレーは山梨県人」とアホな冗談をいうほど身近な存在でしたが、フランス人に解説されたおかげで「ミレーは世界的に有名で美術史上大事な画家」と再認識。
また、4度目の鑑賞が良かったのか、それともバルリエ先生のふわふわしたシャンソン風イングリッシュのおかげか、これまで頭を素通りばかりしていたミレーの知識が、無事に脳内にとどまりました。
「若いうちは分からないことが多い。時間・経験・知識が必要なこともあります。楽しいこと辛いことを経験して、30年後に同じ絵を見たらまた違うかもしれない。フランスにあるミレーの絵を見て、ここのミレーを見たら印象が変わるかもしれない。色々なことを経験して、色々な絵を見なさい。世界中の画家の絵をたくさんたくさん見なさい。」
バルリエ・マジックにかかった私は、「とりあえず画集でも見てみようかな」なんて気持ちにもなり、ミレーへの意識が少し変わったのか、パリ・オルセー美術館での『晩鐘』観覧を人生計画に加えることに。
そして、その6年後にオルセーを訪問したとき、とても思い出深いできごとがありました。
この続きは、また次回。
アートギャルリー日本ぶっくあーと、見習い14年目
mayumi
2014.06.24.
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〜世界の巨匠と日本画の原画・版画〜
アートギャルリー日本ぶっくあーと
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【 生誕200年 ミレー展 −愛しきものたちへのまなざし− 】
◇山梨県立美術館: 住所: 〒400-0065 山梨県甲府市貢川1丁目4−27
電話:055-228-3322
◇会 期: 2014年7月19日(土)〜8月31日(日)
◇開館時間:午前9:00〜午後5:00(入館は午後4:30まで)
◇休館日: 7月22日、28日、8月4日、25日
◇観覧料: 一般1,000円 大学生500円
20名以上の団体、 一般840円 大学生420円
山梨県内ホテル・旅館宿泊者割引料金 一般840円 大学生420円
※以下の方は無料です
小学校、中学校、高等学校、特別支援学校の児童・生徒
山梨県内在住65歳以上(健康保険証等持参、県外の65歳以上の方は常設展のみ無料)
障害者手帳をご持参の方はご本人と付き添いの方1名
◇前売券: 一 般 840円、大学生 420円
◇前売り券の取り扱い
・山日YBS本社受付(甲府市北口2丁目)
・山日YBS富士吉田総支社(富士吉田市下吉田)
・山梨県立美術館
・ローソンチケットLoppi(Lコード:34223)
・セブン-イレブン チケット(セブンコード:030−526)
■記念講演会
◇7月19日(土)午後2時〜、総合実習室、聴講無料
講師
井出洋一郎さん(府中市美術館館長)、ルイーズ・ル・ギャルさん(トマ=アンリ美術館館長)
ミレーを取り巻く環境や風土とのかかわりについての講演とトークセッション
◇8月2日(土)午後2時〜、総合実習室、聴講無料
講師
馬渕明子さん(国立西洋美術館館長)
社会的な背景を踏まえた、絵画における農民像や家族像の需要についての講演
■キッズプログラム
◇7月30日(土) @10:00〜12:00 小学生対象 A13:30〜15:30 中学生対象
講師 西岡優子さん(アナンダ)
展示作品の説明と羊毛を使った実技
定 員 各回30名程度
申し込み期間 7月8日〜7月29日