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2012/05/08 13:32:11|美術品まめ知識
絵画の履歴書 【美術品まめ知識(9)】 
 

お客様からいただいた質問をもとに、今日は絵画の書類についてお話したいと思います。

 

Q 来歴(らいれき)とは何ですか?


 前回少し触れました贋作者ジョン・マイアットが加担した事件のドキュメンタリー本、
偽りの来歴 ─ 20世紀最大の絵画詐欺事件 の主題になっていますから
気になった方も多いのではないでしょうか。

 

来歴とは所蔵歴ともよばれ、かなり高額な作品を取引するときに使用頻度が上がる用語です。
作品自体の経歴のようなことで、画家がその作品を世に送り出してから、
どのような過程を経て今にいたっているかという記録
といえば少しご想像がつくでしょうか。
 
例えば (もちろん架空)
 ■1900年 山梨県甲府市の太田唯男が、作者より購入
 ■1910年 4月 東京なんちゃら美術館 『なんちゃって展』に出展
 ■1950年 5月 所有者が 甲乙丙オークションで売却、ロンドン・オタオタ画廊が購入
 ■1950年 7月 ロンドン・オタオタ画廊が山梨県甲府市の日本ぶっくあーとに売却
 ■現在に至る
 
履歴書みたいですね。

このような文書記録の他に、その記録を裏付けるもの、購入した際の領収書、手紙、
美術展に出展(貸し出し)した際に作品裏に貼られる美術館のシールや展覧会図録、
などなども含まれます。

全ての高額作品に100%来歴書類があるわけではありませんし、
記録が抜けていたりすることもあります。

しかし数千万〜億単位クラスの絵画取引になると来歴書類の存在は重要視され、
評価額に影響を与える大きな要素となります。

『 この絵は真作 (しんさく/ 間違いなくその画家が描いた作品)だ 』
『 価値がある作品だ 』 と保証されるようなものですから、
来歴がしっかりしていればその作品に対する信頼度もUPしてしまいます。


さて、ジョン・マイアットの絵画詐欺事件に話はもどりますが、
この事件では来歴がねつ造され、
人を信用させるための書類が、人をだますための書類として悪用されました。

事件を『20世紀最大』にまで発展させたのはマイアットの描いた贋作ではなく、
首謀者のジョン・ドゥリュー(John Drewe)の存在と、
ドゥリューが作り上げた『偽りの来歴』です。

 

教養と品格ある英国紳士を装い、原子物理学教授をかたる詐欺師“ドゥリュー教授”。
マイアットに贋作を描かせるかたわら、権威ある美術館の資料室や図書館に出入りし、
ニセモノに“お墨付き”を与える来歴書類や図録を挿入し続けました。
全てドゥリューが自宅で“切ったり貼ったり”古いタイプライターで文書を打ったりして、
手造りしたものです。


通常、そのような重要記録が保管されている場所には関係者以外立ち入り禁止です。
ところがドゥリューは心をわしづかみにする巧みな話術で関係者をことごとくだまし、
美術館への作品寄贈や寄付をエサに、貴重資料の閲覧許可を手に入れて、
堂々と『美術史を書きかえ』ていました。

 

小説なら笑ってすませられるのですが、なんとも恐ろしい事件です。
しかし、『20世紀最大の絵画詐欺事件』は遠い国の話でも、
ちょっとした贋作騒ぎは身近で起こる可能性があります。

 

次回はネットオークションでの絵画売買についてお話します。


 


アートギャルリー日本ぶっくあーと、太田でした。
2012.05.05.





アートギャルリー日本ぶっくあーと

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2012/05/08 13:31:07|美術品まめ知識
贋作画家 【美術品まめ知識(8)】



お客様からいただいた質問をもとに、今日は贋作(がんさく)画家についてお話したいと思います。

 

Q 贋作(がんさく)を描ける人は相当絵がうまいと思います。
  なぜ画家になれないのでしょうか?

これは、用語の意味をお答えするようにはお話できません。
私の個人的な意見になりますことご了承ください。


まず最初に、『相当絵を描くのがうまい』ということについてですが、
贋作者の中でも技術の差に大きな違いがあります。

■ 美術に縁がない素人(しろうと)が見ても『これはヒドイ』と“笑いを誘うレベル”
■ 専門外の玄人(くろうと)が『一見分からない』と“笑えないレベル”
■ 専門家が『判定が困難』と“凍りつくレベル”

もちろんこれは分かりやすく分類しただけで、
各レベルにも無数の中間段階があるでしょう。

次に、『なぜ画家になれないか』ということですが、
みなさまもご想像がつくように、
仮に“凍りつくレベル”の贋作が描けても、
技術だけで画家になれるわけではありません。

ほかの職業でも同じですね。
歌が上手、野球が上手、話が上手、などなど
“上手な人”はたくさんいても、プロとして生きていける人は少ないです。

贋作者に関して言えば、絵は上手に描けるのだと思います。
しかし真似する技術はあっても、他の画家の素晴らしいと思うところを吸収し、
自分なりに新しい形で表現する、ということができないのでしょう。

また、個性があったとしても、多くの人を惹きつけられる作品でなければいけません。

作品には作者の魂(たましい)が宿ります。
分魂(ぶんこん)といわれますが、見る人の魂が作者の魂に揺さぶられて、
『全然分からないけど、なんかこの絵に惹かれる』
『この作品の前から離れられない』
『もっとほかの作品もみたい』
『この人の絵が欲しい』 と思われるのではないでしょうか。

実は、元贋作絵師で、いまは画家として正々堂々と生きている人がいます。
ロンドンで起きた『20世紀最大』といわれる絵画詐欺事件に加担した、
ジョン・マイアットです。

マイアットが描いた贋作は、1980年代後半から1990年代にかけての9年間で
240点以上とされています。
マチス、ゴッホ、ジャコメッティ、シャガール、ピカソ...ほか
誰もが知る超有名な画家達の贋作です。
多くの美術専門家をだまし、大手オークション会社に出品された作品もあります。

逮捕後はこの詐欺事件捜査に全面協力し、
また12ヶ月の刑期も模範囚ということで4ヶ月に短縮されたようですが、
1999年に釈放されてからは、テレビで番組をまかされるほど人気がでてしまいました。

彼のホームページの情報によれば、
今年10月にイギリスのバーミンガムで個展が開催される予定で
彼のオリジナル作品と『本物の贋作』が展示されるとのこと。


ここでは彼についての詳しい話は避けますが、
興味のある方は、John Myattで検索してみてください。

彼のホームページ(英語)で作品を見ることができます。

また、マイアットが加担した絵画詐欺事件のドキュメンタリー本も出版されています。

翻訳本もあります。
↓ (画像をクリックするとamazonの紹介ページ)


 
1ページに20行分も小さい文字がぎっしりあるので、
それを見ただけで頭が痛くなる私はまだ読んでいません。
登場人物が多く、カタカナもいっぱいあるので、避けています。
ですから、うちのスタッフに読ませて要点を聞きました。

ちなみに、そのスタッフは本に登場している町のいくつかに住んでいたそうです。
詐欺事件の起こったリアルタイム、
2000年までの約7年間をロンドンで生活していたのですが、
詐欺の首謀者である男が暮らしていたとされる“ゴールダーズグリーンに
1997年の夏(ダイアナ元王太子妃が亡くなった夏)に住んでいたとかで
事件の内容うんぬんよりも、そのことでかなり盛り上がっていました。


次回はその『20世紀最大の絵画詐欺事件』の首謀者について少しお話するつもりです。


 
アートギャルリー日本ぶっくあーと、太田でした。
2012.05.02.





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2012/04/29 11:57:26|美術品まめ知識
贋作(がんさく) 【美術品まめ知識(7)】



お客様からいただいた質問をもとに、今日は贋作(がんさく)についてお話したいと思います。

 

Q この絵は贋作(がんさく)ですか?

お客様からいただく数々のご質問のなかで、もっとも衝撃的なのがこれです。
年に数回あります。

うちの画廊で、
『これは贋作ですか?』
『これはニセモノですか?』 というご質問がある場合、
お客様は“複製画”という意味でおっしゃられています。
例えば、モナ・リザとかゴッホのひまわりとか、
みなさんも一度はご覧になったことがあるでしょう。

この質問をされる方はおそらく、以下のようにご理解されているのではないでしょうか。

■ 原画 = ホンモノ

■ 複製画 = ホンモノではない = ニセモノ

■ 贋作(がんさく) = ニセモノ

ゆえに、 複製画 = 贋作(がんさく)


複製画
は、原画が美術館等に所蔵されていて、
その絵をもとに同じ図柄がつくられていますね。
ですから、原画ではない = 贋作(がんさく) というご理解だと思われます。
しかし複製画は贋作とはいいません。

複製画は、多くが巨匠による“名画”と称されている作品で、
著作権者の承認を得たり、原画所蔵元の許可を得たり、監修者がいたり、
合法に作られています。
ホンモノと間違えるほどあまりに素晴らしい出来の複製画(復刻画)もありますが、
「これは複製画ですよ」という何らかの目印があります。
売る人も買う人も 「これは複製画」と分かります。

一方、贋作(がんさく)は有名な作品や有名な画家の作風そっくりに絵を描いて、
それをその有名な画家が描きましたよ、と偽った絵です。

『この画家の絵は高く売れるから、本物と言ってダマしてやろう。ひひひ、ボロぼうけだ。
だまされるほうがマヌケなんだよ。』
そうです、悪意があります。
もちろん、非合法です。警察につかまります。

ところが、贋作絵師として逮捕されたのに、人気がでてしまった人がいます。
気分の良い話題ではありませんが、次回はその人のことも少し触れようかと思います。
 

アートギャルリー日本ぶっくあーと、太田でした。
2012.04.29.





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2012/04/27 13:27:48|美術品まめ知識
石版画のプロセス 【美術品まめ知識(6)】



お客様からいただいた質問をもとに、今日はリトグラフ(石版画)の制作工程についてお話したいと思います。


Q リトグラフ(石版画)の版には“みかげ石”が使われるのですか?


リトグラフ(石版画)は、版材を彫らずに、化学処理をすることでインクがつくところとつかないところを作り出す版画の技法です。


リトグラフの「リト」とはギリシャ語の「石」を意味するlithosに由来しています。
グラフ」はギリシャ語の「描く、記す」を意味するgraphiaが語源です。

つまり“石に描く”ということですが、ただし、その石は何でもいいわけではありません。
リトグラフに使われるのは、石灰岩です。


なぜなら、石灰岩はスポンジのように無数の微細な孔(あな)あって、
水分や油脂を受け付けやすいという性質があり、
また石灰石のカルシウム薬品の化学反応を利用して
絵の部分を定着させることから、石灰岩が適しているのです。


ただし現在では、石板は重い、値段が高い、磨くのが大変、ということで
多様な版材が使われています。
おもに、亜鉛(ジンク)アルミの薄い金属板ですが、最近では木板などもあります。


石板を使った伝統的なリトグラフでは、ヨーロッパの石灰石が使われます。
代表的なのは南ドイツ・ゾルンホーヘン産の石灰石です。
18世紀末(1798年)にリトグラフの技法を発明したドイツ人のアロイス・ゼネフェルダーが、
南ドイツで採れる石を用いたのが始まりです。


かなりの手間を要するリトグラフ制作ですが、
石板を使う際の主要なステップは下記のようになります。


 


1) 石版の表面を研磨
 刷ったときにムラができるため、数ミリの凹凸も許されない。


2) 砂目たて
作品に淡い色、濃い色などの諧調の幅をだしたいときは、さらに石版表面に無数の突起(砂目)を立てる“砂目立て”とよばれる作業をする。
石版に油性クレヨンで絵を描いたときに、この突起にクレヨンが付着するが、
この付着する密度で、仕上がりが左右されるから。(淡い色の部分・濃い色の部分)。


3) 石版に絵を描く
使われるのは、リトクレヨン・ろうをベースとした墨など油性の材料


4) 石版に化学処理をする
アラビアゴムという樹液を乾燥させたものを水に溶かしたアラビアゴム水溶液硝酸を石板の表面にぬる。
→ 絵を描いたところの油分硝酸が化学反応して脂肪酸になる。
→ さらにこの脂肪酸が石灰石のカルシウムと化学反応して、絵を描いた部分が定着する。
→ 絵が描かれていないところはアラビアゴム薄い膜となり石版表面の突起や孔(あな)を被う(おおう)。この皮膜は水を引き付ける親水性


5) 石版を洗浄する
溶剤で描画部分の油をおとす。
水でアラビアゴムをおとす(皮膜は流されない)。
→ 絵を描いた部分が現れる。


6) インクをつける
水で湿らせた石版の表面に、皮ローラーで油性インクをつける。
→ 絵が描かれているところにはインクがつく
→ 絵が描かれていないところ親水性の膜におおわれているので油を拒絶しインクがつかない。


7) プレス機で刷る


 


最近使用される、亜鉛やアルミの金属板では使われる薬品が違う等、
すこし工程が変わりますが、いずれにしてもかなり手間のかかる技法です。


実際にご覧にならないと、理解するのが難しいと思います。
私達は研修のため、都内やパリの工房でリトグラフ制作の工程を見ていますが、
研修前は私も???でした。


 


次回は贋作(がんさく)についてお話する予定です。



アートギャルリー日本ぶっくあーと、太田でした。
2012.04.27.






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2012/04/25 9:02:00|美術品まめ知識
石版画 【美術品まめ知識(5)】



お客様からいただいた質問をもとに、今日はリトグラフ(石版画)の作り方についてお話したいと思います。


Q 原版を彫らずに、なぜ版画ができるのですか?


リトグラフ(石版画)は、木版画とちがって原版を彫らない版画です。
ひとことで言うと、リトグラフは化学反応と、油と水とが混ざらない性質を利用する版画です。

原版に直接絵を描いて、そのあと薬品をつかって、その絵が版に定着するよう処理をして版が作られます。

白黒ではない、多色リトグラフの場合は、色の数と同じだけの版が必要です。
つまり、15色使いたいと思ったら15版必要になります。
木版画とおなじように、非常に正確な目印をもとに、それぞれの色の版が重ねられます。

恐ろしいほど手間がかかります。

もうすこし詳しい制作手順はまた次回。




アートギャルリー日本ぶっくあーと、太田でした。
2012.04.25.






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