新聞、雑誌等に書いたもの、どっかでしゃべったこと、書き下ろし……の置き場です。 主に文学・歴史関係が多くなるはずですが、何にでも好奇心旺盛なので、どこまで脱線するか?!。 モノによっては長いのもありますが、興味のあるところから御覧下さい。
 
2013/05/28 6:21:10|アート
国民文化祭・演劇の祭典
山梨で行われている第28回国民文化祭も、通年開催を意気込んだが、何時、何処で何が行われているのか、県民・観覧者に情報が行きわたっておらず、どこでも参加者数が少し物足りないようだ。

夏から秋にかけて、目玉が繰り出される。

その一つが、6月8,9日の演劇公演。
水木亮原作、望月純吉(文学座)演出の「祝祭」である。
原作の同題小説は、すでに第16回織田作之助賞を受賞している。
暑苦しく、泥臭いが、たくましい甲州の庶民像が躍動する。
甲州人のアイデンティティを知るのに好適な出し物だろうと思う。

原作・演出は親子で行う。
この二人の火花の散らしあいの結実も見ものだ。
脚本化した「祝祭」は「猫町文庫」第4集に掲載してある。
先述の「火花」のなかで、多少アレンジもされているかもしれないが、「読む芝居」としても面白い。

当日、会場入り口で第4集を含む「猫町文庫」を展示・販売させてもらいたいと願っている。
ささやかだが、こんな文化活動も行っているよという表現ともしたいのだ。

6月8日(土)18:30開演、開場18:00
6月9日(日)14:00開演、開場13:30
甲府市総合市民会館芸術ホール
1,000円







2013/05/26 9:47:39|本・読書・図書館
埼玉県立図書館、司書採用!!
大学で司書教諭資格の科目を受けている学生から、彼の地元の埼玉の高等学校図書館活動の案内をもらった。
学校図書館に関心を持ち、また、読書の場としてだけでなく、学習の場として、学習の材を得る場として、考える人々が増えることはありがたい。
まして、「学力向上」を専一の課題のように考え、進学実績向上が金科玉条にされている感のある現代、リーフレットをくれた彼のように、活動をお手伝いしている学生がいる嬉しいし期待が持てる。
児童生徒の頃から学校図書館に関心を抱いてきて、ますます可能性を見出そうとしていると思えるからだ。
このもよおしのように県立高校の「有志」がこのように立ちあがって……というのはあるようでない。
できれば、私も覗きに行ってみたい、と思う。

ところで、リーレットを見ていて、彼我を比べ心底羨ましくなった記述があった。
それはこういうものだ。

「2012年秋、埼玉県の司書採用試験が再会し、2013年4月には高校図書館にも3名の新人の司書を迎えることができました。
今年の埼玉県高校図書館フェスティバルは「ファイナル」と銘打って、「専門・責任・正規」の司書がいるからこそできる図書館活動をお伝えしたいと思います。
図書館でもっと楽しむ!」


県立図書館は、県立図書館本館ばかりでなく、県立学校(高校)図書館、県議会図書室、県立博物館、同文学館、環境科学研究所、工業技術センターに司書を供給している。
学校図書館司書はまかないきれず非常勤のケースもある。
ところが、指折り数えてみると、山梨の場合、もう7年も司書の新規採用を行っていない。
その間、私の知る限りでも、「自己都合」による退職が2名、定年による退職が4名、司書は6名減少している。

本館自体、あのように大きな施設となった。
郷土資料関係、子ども読書コーナーはじめ、ビジネス支援から法律・医療情報など、図書館に求められる課題はますます多い。
司書が自然減少のままで対応しきれるはずはない。
現に高校の司書の殆どが非常勤だ。

「図書館の活用のためには「ひと」が大事」と現館長は言われた。
この考えを受けて、県では、計画的に司書を採用すべきだ。
あの合理化の進んでいる埼玉県でもできたのだ。

一昨日、新県立図書館は利用者(登録者?)が50万人を越えたという。
この状況は「交流の場・賑わいの創出」と言ってきた図書館建設のパブリック・コメント以来の「ねらい」には合致しているのだろう。
けれども、これで望ましい県立図書館の姿だと言えるだろうか。
TSUTAYAの造った佐賀県の図書館と変わらないことになりそうだ。
それが困ったことである意味もわからなくなりそうだ。
駅裏の県立図書館は中高大生の学習スペース利用が殆ど。
高齢者の時間つぶし利用も。
「もう行った?」「まだ行かない」
というやりとりが各所で流行するのも、現状の使い方中心では喜べない。
図書館は資料(情報)と専門家の活用で生き死にが決まる。
ルールも見直すべきだ。

このままでは、全国的にあまり評価の高い公立図書館とは言えまい。







2013/05/23 13:32:00|民俗・芸能
照手姫から始まって
先日甲州街道の小原の本陣を見た時に、近隣の山間の美女谷温泉が目に着いた。
以前から車で街道を通る時に気になっていた土地である。
今回知ったのは、説経節の『をぐり』(小栗判官)の照手姫が身を寄せていたとか生まれたとかの伝説のある谷らしい。
谷あいに入っていったら、温泉は既に閉業、山道は細くなるばかりで心細くなって引き揚げてきた。
なぜこんな僻遠の里に照手の伝説があるのかと色々考えさせられた。

見えない、聞こえない、話せない、歩けないの小栗判官といい、小栗とちぎった照手が蛇身だったとか、牢籠で相模川に沈められそうになった逸話など、障害者や難病人への差別や隔離の習わしを連想させる。
そうして、これが人形操りの門付け芸と一緒になって、大いに人気があったというこの国の民俗。
これを機会に、「山椒大夫」「しんとく丸」「信太妻」等の説経節を読んでみようと思った。
また、小沢昭一の収集した「日本の放浪芸」のCDも改めて聴いてみるか、と思った。
小沢の困ったところは、勝手に割愛したり、自らが割り込んだり、勝手な解釈を演芸者に押し付けたり、まねて演じてみたりしているところだ。
おちょこちょいの江戸っ子でなければできなかった仕事だが、江戸っ子なりの軽薄さも仕事に反映している。
膨大で貴重な音源が残されているだろうし、今は消えてしまった芸も多く含まれている。
この公開こそ期待されるところだ。

甲州にも流鐸させられた後陽成天皇の八の宮良純法親王のことや、奈良田に流されてきたさる女帝のこと、はては深沢七郎の小説「妖木犬山椒」のことなど、とつおいつ考えてしまった。

榎並和春さんの個展「どこか遠く3」も、千葉だが、できれば拝見したいと切に思う。

写真:甲府湯村温泉「明治」







2013/05/18 14:51:00|雑誌「猫町文庫」
「猫町文庫」第4集刊行!!
「猫町文庫」第4集刊行!!
ただ今、執筆者、維持会員ほかに鋭意い発送中です。
お送りできるところはお送りし、これも経費が膨大だから、届けられるところはお届けしている。
北の方では田植えの最中だ。

内容はすでにお知らせの通り。
多彩で充実した内容だ。
ある執筆者から「校正ミス」の反省の弁があったが、自分も、自分の文章でミスったところがある。
少し後味が悪い。

スキャナーの調子でしょうか、表紙の色合いが実物は左と少々異なります。







2013/05/16 9:18:37|深沢七郎
甲州道中の本陣家
ここにも「深沢七郎」のくくりで何回か書いたが、甲州道中の甲府の城下には柳町本陣があった。
かつて柳正堂書店の本店のあった北側、これまたかつて井上文具店のあったあたりである。
本陣は、大名行列の旅宿というばかりでなく、家持惣代、駅年寄、脇本陣と共に、甲府城下の行政を担った。

この家は深沢七郎の生家であることも、何回か触れた。
正確にいえば、七郎は四男坊であるが、すぐ上の兄さんまで、この家で生まれ、七郎自身は石和に転退してからの生まれだ。
深沢家は若松町の信立寺が菩提寺であり、初代から15代までの本陣深沢家の「過去帳」のごときものが伝わっている。
不思議なことに、ここでは、本陣家の「初代・先祖」は、徳川幕府草創期の実力者で、死後没落した大久保石見守になっている。
大久保家は一族のほとんどが処刑されて滅んでいるはずだが、この記録の意味するところは、まだ、明らかではない。

大久保石見は元武田の家臣の猿楽衆大蔵太夫の次男である。
武家に抱えられて「土屋」の姓をもらい、金山開発から貨幣制度確立、周辺諸国の情報収集に功績をあげる。
武田滅亡後は家康に抱えられ、金銀山開発から、財政基盤の確立、直轄領の支配・管理、五街道一里塚の整備にいたるまで、テクノクラートとしての功績は目覚ましかった。
殆ど初代の「大老」格だったようである。
死後墓を暴かれて、改めて断罪、斬首させられ、一族皆殺しになった。
私腹を肥やしたとか、私権力横暴とか、幕閣の権力闘争とか、様々に言われるが、このいきさつも詳細はいまだに不明である。

ところが、終戦間際の昭和20年7月6日、アメリカ軍による空襲を受けて甲府市街は8割方焼失してしまった。
脇本陣は「佐渡幸」として初年まで旅館業を営んでおあり、写真葉書なども残されている。
が、本陣の方は、明治末から大正にかけて、順次姿を変え、間貸しのようになり、やがては売却してしまったすえの焼失である。
だから、なごりも甲府柳町本陣については、写真も、葉書も、今のところ見てはいない。
こういうことに打ち込んでいる人にもあるかどうか分からない。

甲州道中で比較的旧態を残しているのは、相模湖ちかくの小原本陣くらいであろう。

深沢の血の中に体制への根強い不信感と怨念があるような気がする。
韜晦しながら、七郎の本音がどう作品を形作っているか、少しずつ解説してゆきたいと思っている。

写真:小原本陣跡