距離がもたないだの初コースだの不安材料だらけで今回こそは大きく負けることもあるかも・・・と敗戦の覚悟を持って臨んだ安田記念を快勝し、もはやカナロア最強神話は引退まで続くものだと微塵も疑いを持つことなく年内無敗で引退するものだと思っていました。
その「絶対王者」カナロアが当初の予定を変更し、昨年同様にスプリンターズS(GT)の前哨戦となる先週末行われたセントウルS(GU)へ出走しました。
安田記念後、感動の極みの中「引退までの3戦は必ずこの眼で見届けよう!」と心に誓った私は、迷いもなく、いや少々の迷いはあったもののプライオリティをカナロアに置き今回初の仁川・阪神競馬場へと赴くこととなりました。
昨年までなら、いくらカナロアが出走するとあっても遠路遥々現地応援には向かわなかったのかもしれませんが、今年はカナロアを通じ関西にも友ができたため再会の嬉しさも手伝い意気揚々と西へと歩を進めることができました。
昼過ぎにようやくハマカゼケンタロウさんと松さんが待つ阪神競馬場へ到着。
仁川までの阪急電車、阪急梅田駅といい入場してからの雰囲気、女性のコンシェルジェの佇まいなど「高級感」を感じさせる競馬場には軽いカルチャーショックも受けました。
待ちに待った再会を果たしたお二方、なんと10人だけが堪能できる「口取り権利」を保有しており正装でのお出迎えでありました。さらに今回もゴール前、しかも昼までの雨を考慮し室内の特等席を確保していただきました!そして約束のカツカレーを堪能し、いざカナロアとの再会の場であるパドックへ!
おそらくこの時、3人ともカナロアが負けるなんて微塵も思っていなかったはず・・・
正直、カナロアはG1戦のパドックしか見たことがないので前哨戦の今回は少々余裕残しであることはわかっていながらも、何か覇気というか漲る闘志は感じられず、おっとりというか落ち着き払っているというか、どうとらえていいのかわからないパドックの雰囲気でした。
そして場所を口取りの撮影に備えウィナーズサークル正面に陣取り、儚き67秒の火蓋がきられました!
少々ペースは落ち着いたものの、4角までは勝ち馬を見ながら不利も受けないコース取りで上々の滑り出し。ぴったりとマークされ後ろにいるバレンチノ君の末脚を心配しながら、勝負どころを迎えたものの勝ち馬に並びかけるのに手間取り、いつものように一瞬で交わすこともできず「アレ?アレッ?アレッッ!?」と結局そのまま勝ち馬を捕らえきれず逃げ切りを許すこととなりました。
3着以下は大きく離していますし、時計的にもレースの内容も上出来なレースだったのですが、カナロアが負けるなんて微塵も思っていなかったので、何が起きたのか?えっホントに負けたの?って感じで拍子抜けしたまま佇んでいると、勝ち馬が表彰にやってきたのでようやく退散。
当然レクチャーも表彰がないので思ったより早く、サインのないゼッケンを手にしても作り笑顔しか出来ない惨状となりました。
「競馬に絶対はない」
そんなことは百も承知でいながら、いつのまにか「絶対王者」が負けることなどないと、カナロアに対する過剰な愛情から周りが見えなくなっていたのかもしれません。
幸い、レース後カナロアに異常はないとのことで一安心ですが、連勝の始まる前の最後の敗戦の地で「君たち、俺だって簡単に勝ってきたんじゃないよ、機械じゃないんだし相手もあるんだから」とカナロアに論された気持ちにもなりました。
今回だって負けたとはいえ精一杯の走りを見せ最後まで抜き去ろうとクビ差まで詰め、恥ずかしい競馬はしていません。ほんの一年前の昨年の今頃までは僚馬でありスプリント女王のカレンチャンの背中を追いかけ、3連敗の中臨んで勝ち取ったスプリントG1。
そして王者として追われる立場で勝ち続けるのは至難のなか、海外競馬、距離も克服し自ら勝ち得た「世界のカナロア」「絶対王者」の称号はいつだって挑戦者のカナロアが切り拓いてきた道なのです。
これからは、まだ誰も成し得ていないスプリンターズS連覇を目標にまだまだ進化しチャレンジしてくれるのでしょう。
そして、私も「カナロアは勝つのが当たり前」なんて気持ちをリセットし、一年前と同じよう中山の地で熱い涙を流すことができるよう精一杯応援しようと思います。
カナロアよ、また元気な姿を中山でみせておくれ!
そして、カナロアのおかげでまた楽しい旅が出来たよ!
本当にいつもいつもありがとう!
そう宿舎近くに聳え建つ大阪城の天守を見つめながらつぶやき、浪花の地を後に静かに東へと向かうのでありました。