田沢湖は日本で最も水深がある湖です。 その深さは、最深部で423bもあるのです。 実は、更に不思議な事実もあります。
それは、田沢湖の水深が、 なんと、周辺の日本海の水深よりも深い―。 と、云う事実です。
これは、田沢湖はかつてはユーラシア大陸にあり、 地殻の変動により、日本列島にくっ付いたカルデラ湖―。 であることが、分かって来ました。
その田沢湖に居た固有種であったクニマスの先祖も、 実は、ユーラシア大陸に棲息していた、 サケ科の魚であったと云っても過言では無いでしょう。
さて、写真は2010年に山梨県の西湖で、 クニマスが発見された時の新聞記事です。
この世紀の発見に「さかなクン」が、 深く関わっていた事は、当時も大きなニュースでしたし、 絶滅から70年を超えて命を繋いでいた事実は、 本当に奇跡としか言い様がなく、 当時の今上天皇であった、平成天皇(上皇陛下)が、 「奇跡の魚(うお)」として、功績を讃え、 さかなクンの名前を出された事を、 記憶されて居る方も、きっと多いと思います。
では何故、クニマスは故郷の田沢湖から、 遠く離れた富士五湖の西湖で発見されたのでしょうか。 今日は、この事について書いていきたいと思います。
前の投稿の最後で、子孫を守るべく、 日本各地に、受精卵・発眼卵を移入させた―。 と、書きました。その一つが、西湖だったのです。
前記の通り、田沢湖は水深があるので、 水深が浅い湖沼は候補から外されました。
なので、移入されたとされる湖沼もまた、 それなりに水深のある湖沼が対象になっています。
西湖のほか、その隣にある本栖湖。 長野県の野尻湖。ほか、富山県内のある場所に、 移入したと云う記録が残っています。
クニマスが田沢湖の固有種とされた一方で、 クニマスは、同じサケ科である、 『ベニザケ』の、陸封個体であることも付記されました。
ベニザケの陸封個体として広くしられているのは、 『ヒメマス』ですが、 西湖・本栖湖は、このヒメマスの養殖と、 放流による繁殖にも成功したばかりか、 西湖周辺には、正に田沢湖周辺にゆかりのある、 『三浦』姓の方が多くいらっしゃいます。
その伝手を辿って、当時の組合長であった やはり三浦さんが(お名前までは存じあげない)、 同じく西湖の組合長であった三浦さんに、 書状を添えて発眼卵10万粒を託したのです。 同じく、本栖湖にも10万粒が託されました。
一方、西湖ではヒメマス釣りが盛んで、 春と秋との2回、解禁されるのですが、 特に春解禁の折、 全身が黒いマスが、たびたび釣り上げられました。
が、食味が良くなかった為、 再放流されるケースも多く、 元では、『クロマス』と、呼ばれ、 ヒメマスの変わった個体―。と、云う認識のまま、 時を重ねていったのです。
そんな中、1995年から史実に基づいて、 懸賞金を付けて、「クニマスを探して下さい―」と、 云うキャンペーンが始まりました。
その背景には、魚の住めない湖であった田沢湖の水を、 ある程度中和させてから引き入れる施設が稼働し、 水質の改善が図られ、結果、 酸性でもある程度は棲息できる「ウグイ」などの魚影が、 戻って来た事に端を発し、
再び、クニマスを故郷の田沢湖に蘇らせる―。 と、云う願いを込めて行ったキャンペーンでした。
が、最高500万円まで 引き上げられた懸賞金も効を奏さず、 14個体が持ち込まれたものの、 全てが「ヒメマス」で、あったと云う鑑定が出て、 ついに、クニマスは絶滅のまま、 このキャンペーンは終了します。
当時自分はまだ、釣り具店に勤務していましたので、 懸賞金目当てで、何度も釣りに行った記憶があります(^_^;) が、実はその当時から、 クロマスは間違いなくクニマスだ―。 との、確信を得ていた方が、 西湖漁協にいらっしゃったのです。
そこに目を付けたのが、 京都大学の中坊教授でした。
より正確なクニマスの絵を描いて保存する―。 と、云う目的で、敢えてさかなクンを指名します。 そして、絵を描く参考として、 ヒメマスを西湖漁協から取り寄せる様にと、 アドバイスを送ります。
依頼を受けた漁協は、刺し網で捕獲した個体の中に、 敢えて「クロマス」の、個体を紛れ込ませます。 それを見たさかなクンは、クロマスが余りにも、 クニマスに酷似している事と、 もしかしたら本当のクニマスである―。 との、見解を引き出すのです。
そしてついに、2010年にクニマス発見のニュースが、 一気に全国に広まったのでした。
通常は、先に学会に報告するのがセオリーの様なのですが、 中坊教授は、学会や書籍でのリリースを敢えて避けて、 マスコミによって、その事実を公表する事となった―。 と、聴いています。
実は、前記のエピソードは、 その仕掛け人たるご本人から、 直接、伺った話ですので、間違いないものと思われます。
そして、クニマスは絶滅種から、 野生絶滅に記載が変わり、今も西湖で命を繋いでいます。
そしていつの日にか、また田沢湖に、 キノシリマスが戻る日が来るかもしれません。
※尚、西湖漁協様の名誉を守るため、 お名前も記載しませんし、一切の取材をお断り致します。
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