以前、自分が釣り具店の勤務をしていた時代、 静岡県の清水のお店にいた事は、 ワカナゴや、ナマズの投稿の際にお話ししました。
特に清水に居たときには、 本当に様々な釣りを見て、体験して覚えて来ました。 お店のオーナーが釣り好きだった事もあり、 地元ならではの釣りも、たくさん教えて戴きました。
鮎のドブ釣り、ザリガニ餌の甲イカ釣り、 ぶっ込みのキビレ釣り、そして、 カマスの手持(てじ)釣りもその一つです。
最近では、小型のジグやミノーを使ってのルアー釣りや、 専用のカマスサビキを使った、 胴突き仕掛けの投げ釣りが主流となっていますが、 清水港には以前から、 手持(てじ)のカマス釣り―。 と、云う独特の釣りがありました。
竿は使わず、手で仕掛けの操作をするので、 「手持」と、書いて「てじ」と呼びます。 仕掛けは丸い仕掛け巻きに巻いてあるのですが、 ハリは1本バリで、餌はキビナゴの身餌を使います。
糸巻きに巻いてある糸の先端に、 全長30センチ弱ほどのアーム型の天秤で、 中通しオモリ(6号くらい)が、 天秤の腕に直接通して固定されています。
ハリスは、当時は細いワイヤーが使い出されて居ましたが、 おそらくそれ以前は、 硬めのハリス糸を15センチほど付け、 カマス針か早掛け針を付けていたと思います。
釣り人は、細長く短冊に切ったキビナゴの身餌を、 皮目を表にして付けて、 堤防に陣取って、先ず天秤から海に落とすと、 オモリの重さで、スルスルと仕掛けが出ていきます。
着底したら底を切って、一定のリズムで引いたり、 止めたりしながら、指先でアタリを待ちます。
群れが来ると、素早いアワセと手慣れた糸さばきで、 糸を回収してくると、美味しそうなカマスが、 一尾、また一尾と釣れて来るのです。
自分と云ったら、糸さばきが上手くできなくて、 その度に、道糸が絡まってしまって、 全く釣りになりませんでした。が、ベテラン衆は、 いとも間単に、良型カマスを釣り上げていくのです。
そんな中でひとり、 名人と呼ばれる女性がいらっしゃいました。 当時70代くらいだったと記憶しているのですが、 夕方になるとほぼ定時に堤防にやって来て、 このカマスの手持釣りを始めるのです。
あっという間に数尾釣り上げると、 それ以上は釣らずに、颯爽と帰って行かれるのです。 おそらく、食べる以上は釣らないんですね。
それでも、ほぼ確実に釣って行かれるので、 その方は、いつからか「岸壁の母」って、 清水の釣り人の間では有名な方でした。
自分も数回、釣っている姿を拝見したことがありますが、 実に楽しそうな表情で、 見事に糸を操って釣っていらっしゃいます。
なかなかあんな風に釣りはできないですね。 秋になると、あの手持のカマス釣りを思い出すのです。
自分はもっと簡単に釣りたい派なので、 専用のサビキ仕掛けを買ってしまうのですが、 それでも、釣果は敵わないかもしれません。
おそらくあの清水のカマス釣りも、 今では殆どやられていないと思います。
また見てみたくって、投稿してみました。
カマスって片袖に開いた干物がポピュラーですが、 釣りたては、やっぱりお刺身が美味しかったです。
秋は、カマス釣りの好シーズンです!!
写真は、左がアカカマス。右がミズカマスです。
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