鯛損の「でっかい夢釣りあげよう!!」

魚釣りをもっと楽しく、 魚釣りでもっと綺麗な海を!! フィッシングメッセンジャー野澤鯛損は、 釣りの世界のインタープリターです。 HOOKかんきょう『協育』事務所のページと、 併せてご覧下さい!! 釣り人も、そうでない人も、大人も、子供も、 でっかい夢、釣りに来て下さい。
 
2021/08/24 9:06:01|トピック
暑い北海道 イトウの原野で起った悲劇
皆さん、
覚えていらっしゃいますでしょうかびっくり

熱中症対策で、
土壇場で札幌での開催となった、
東京オリンピックの
マラソンと競歩の競技の事を・・・

皮肉なもので、
コロナ感染もさることながら、
北海道は、観測史上稀に見る暑い夏―ムンク

選手達はコンディショニングが旨くいかず、
結果、熱中症で途中棄権する選手が、
続出してしまいました。

何のために変えたのか―
あれだったら、東京の方が良かった・・・
様々な批判もあった様に思います。

そして、今日からパラリンピックが始まります。
オリンピック同様、
選手の皆さんを、精一杯に応援しましょうね嬉しい
処暑を過ぎましたから、
次第に涼しくなってくれるといいですね。

普段は、クーラーも必要がない北の大地で、
危険―
と、言われるレベルにまで、
気温が上昇してしまった今年の北海道では、

稀少な魚が棲む原野で、
余りにもショッキングな、
水辺の出来事があった様です泣き

それは、日本では北海道にしか、
野生に棲息していない、
日本最大の淡水魚イトウが、

暑熱に晒された河川で、
水温上昇による渇水と、
それに伴う酸欠により、
大量死してしまった
怒る

そんなニュースを、
ネットで見つけてしまいました。
猿払でイトウ大量死 記録的高温、渇水で酸欠か(北海道新聞) - Yahoo!ニュース

酷い―。余りに酷い光景です。
イトウは絶滅危惧種としても知られ、
国内には、保護団体も数多く存在し、
この稀少な魚を守って来ました。

これも自然―
と、云ってしまえばそれまでですが、
暑さと、酸欠でその命を落とすとは・・・
気候変動の凄まじさを感じずにはいられません。

ところで、
自分が初めてイトウと云う魚を知ったのは、

矢口高雄先生の『釣りキチ三平』で、
描かれた『イトウの原野』と、云う、
一連のストーリーです。

物語の中では、釧路湿原に棲む
巨大魚イトウを釣るために、
三平君と魚紳さんは、遠征します。


そこで、地元で「谷地坊主」と呼ばれる、
伝説のアングラーと出会います。

この谷地坊主は、
三平君のお父さん、三平平(みひらたいら)氏と、
どうやら竿を交えた事がある―

ずっと父の姿を追いかけて来た、三平君は、
谷地坊主との交流する中で、
その経験が本当であった事を確信するのです。

が、その三平 平氏と思えるそのアングラーは、
過去の記憶を亡くしていた―

そんなサイドストーリーが展開していきます。

そしてある日、三平君は、
いきなり飛び出した野ねずみを、
イトウが襲った光景を目の当たりにします。

そして、野ねずみをイミテーションしたルアーで、
見事に巨大なイトウを釣り上げる―
そんなストーリーでした。

その頃から、
イトウに興味を持って、いつか自分も釣ってみたい・・・
そんな憧れをも持ちました。

しかし、
この魚は世界で守っていかなくてはならない
そんな稀少な魚なのだ

と、自身で理解して以降は、
釣るのでは無く、いつか保護や保全に関わりたい・・・
そんな事を考えた時もあります。

夏の太陽に照らされた水辺が、
どんどん渇水する中で、
あの巨体に酸素を送り続けることができず、
死んでしまったのではないか―

記事では、そんな事を伝えていました。

夏は涼しい筈の北海道でさえ、
熱中症警戒アラートが発令された、この夏―

このニュースを、
可哀想だ― とか、
非常に残念だ―とか、

そんなひと言で終わらせてしまっては、
絶対にいけないと思います。

徹底的に原因を検証して、
こんな酷い出来事が、絶対に起らないよう、

釣り人一人一人が、
気候変動について、しっかり考えねばならない

そんな、タイミングなのかもしれません。
 







2021/08/23 9:06:01|トピック
今日は処暑なのでサンマの話題で参りましょう!!
今日は、二十四節気の一つである
処暑―
だそうです。

暦の上では、暑さがおさまる頃―
と、云う事で、
この日を境に、次第に秋めいていく・・・
こう云う日であります。

ところで、昨年の8月20日の投稿で、
『レッツスタディー』の、カテゴリーで、
皆様に、こんな問題を出したのです。
鯛損の「でっかい夢釣りあげよう!!」 (easymyweb.jp

サンマ釣りって、どうしてないの
って、云う問題でした。

あの日から、一年を経た処暑となった今日の投稿は、
この問題のアンサー編としたいと思います。

と、云っても、『レッツスタディー』は、
明確な回答を求める意図は全く無くて、
色々と、なんでだろう・・・
って、考えてもらう事が目的のカテゴリーです。

なので、別に正解も不正解もございませんから、
気にせずお読み戴けたら有り難いです。

このサンマ、
云わずと知れた秋の味覚の代表格ですが、
漁が解禁になり、初の水揚げがされるのが、
丁度この処暑の頃にあたります。

今年も8月19日の未明
小型の棒受網漁で捕れたさんまが、
北海道の厚岸(あっけし)漁港に水揚げされました。

が、今年も漁はサッパリで、
1200`も沖合の公海で必死に魚影を追いかけても、
漁獲はたった150`しかなかったそうです。
おそらく、大赤字です。

で、付いた値段が、1尾3780円怒る
高い、高すぎます。
庶民の魚でありながら、この値段じゃ食えん泣き
これは、もろ温暖化が原因だと思います。

と、云う所で、
なぜサンマ釣りがないか―
と、云う解説をしていこうと思います。

これだけ釣りが盛んな日本なら、
サンマ釣りもあって当たり前だよね〜
って、思うのは至極当然のことです。

が、昨年の11月だったか、
山口県長門市の堤防で、
季節外れのサンマが釣れた―
そんなニュースがありました。

この様に、本来の漁期と異なる時期に、
沿岸に群れが迷い込めば
釣る事は、たいして難しくありません。
サビキ仕掛けなどで簡単に釣れます。

ですが、沿岸に迷い込む事は、
極めて稀なケースです。

それでは、基本を先ずは抑えましょう。
サンマは回遊魚です。
大きな群れを形成して移動する魚です。

一方、サンマは低水温を好む魚で、
海水温が高ければ、
本能的にその海域を避けて通ります。

目安となる水温は、およそ18℃
これ以下にならないと、
サンマは獲れないどころか、いません。

ですから、この水温で安定しているエリアまで、
遠出しないと、サンマが獲れない―
と、云う事になります。

ですから、今回も1200`も沖合にまで、
行かなければならなかった訳です。
しかも、移動のスピードが極めて速い―

だから、例え船釣りであっても、
群れを留まらせる事が難しいので、
基本、釣りでは釣れない
と、云う根本的な理由があります。

一方、サンマ好きの方は、
おそらくですが、食べる際に内臓取りませんよね。
釣りでは、コマセを使ったり、
バケバリに巻いてあるプラスティックや、魚皮、
釣りバリなんかが胃の中に入る事も、
少なくないと思います。

サンマを食べて、そんなものが出て来たら、
嫌ですよね。釣った人だけが、
分かってて食べるのであれば問題ないでしょうが・・・

はらわたを出したサンマって、
どうなの?
って、思っちゃいますもん悲しい

食べる事を前提としていれば、
例えばリスクを負って釣り船を仕立てる、
そもそも需要がないのです。

従って、サンマ釣りはない
と、云う結論になって来ます。

でも、ここで考えなければいけない、
大きな問題がありますよね。
サンマが獲れない = 海水温が高い
と、云う事です。

以前は、東北から北海道沿岸では、
丁度この処暑の頃には海水温が下がり、
サンマが沿岸までやって来ていた―
と、そういう事です。

ここ近年の台風の迷走や、
大雨被害も、こうしたところに起因します。

が、現状では、沿岸エリアの海水温が高いので、
極論を言えば、獲れないのは当然―
なのです。
それを云っちゃあおしまいよ〜!!
と、云われてしまいそうですが、

自分の見解では、
それを云わなきゃなんめ〜よ〜!!
って、それくらいの覚悟です。

サンマの不漁を嘆くのでは、絶対に解決しません。
年を追うに連れ、この問題は深刻化します。

漁師さんのせいなんかではなく、
温暖化を助長させる、現代の我々の生活様式こそ、
変えていかないと、秋にサンマは食べられません。

プラゴミの問題もありますよね。
これもどうにかせんといかんです。

このように、一種の魚を考えただけでも、
様々な環境問題が絡んでいると云う事です。

みんなで、もう一度サンマリターンを願って、
気候変動に取り組みましょチョキ
きっと、日本人にしかできない事だと思いますよスマイル

もう既に・・・
でしょうが、サンマは高級魚になっていて、
庶民の口には入らない、高嶺の花になるでしょう。
でも、それは我々の責任でもある訳です。

それでも必死に、
旬を追いかけてサンマ漁をして下さって居る、
漁業者の方に感謝こそすれ、
漁獲圧(需要)を掛けるのは慎まないといけません。

最後に、処暑のサンマで一句詠んで終わりにします。

もう食えぬ
 高嶺の花よ 処暑さんま   鯛孫


お粗末さまでしたウィンク
 







2021/08/22 9:06:01|レッツスタディー!!
深海に漏れていくプラゴミ
7月5日の投稿で、
海洋研究開発機構(JAMSTEC)から、
講師をお招きして、
深海のプラスティックゴミについて、
オンラインで勉強会が開催される事―

但しリアルタイム配信の、
チケットは既に完売して、
講演の録画を見る事ができるようになった事―

などを、告知する投稿をさせて戴きました。
皆さん、覚えていらっしゃいますか!?
鯛損の「でっかい夢釣りあげよう!!」 (easymyweb.jp)

勉強会の開催日の翌日、
録画配信されたものが届き、
時間を掛けて、じっくり視聴させて戴きました。

申し送りの中で、
その録画が見られるURLは拡散不可だとの事で、
今日は、当方が見たまま感じたままを、
ポイントを抑えて、
お伝えさせて戴く事に致します。

では始めますね。

ポイント1は、
これまでどのくらいのプラスティックが作られて、
どれくらいの量がゴミになってしまったか―
です。

人類が「プラスティック」と、
云う素材を開発したのが、1950年代の事です。

軽くて加工しやすく、
しかも安く手に入るプラスティックの、
総生産量は、83億dにも及んでいるそうです。

この中で、既にゴミになってしまっている量は、
なんと63億dだと事です。
しかし、リサイクルされた分は、
全体の9%に過ぎないとの事です。

その中で、
毎年2100万dが海と川に流出しているだろう―
と、なんともショッキングな数字が示されました。
具体的な数字を示すのはここまでにします。

とにかく、大量のプラゴミが世界の海に、
流れ出ている事実を、
先ずは受け止める事
が大事かと感じました。

講師の方は、流出ではなく、
「漏れ出す―」と、云う言葉を使われていました。
言い換えると、管理できていないプラゴミが、
実はたくさんある―
そういう事であろうと想像しました。

そして、2050年には海洋に漏れ出すプラスティックが、
単純に魚の総量を超えてしまう
だろう・・・

そんな試算がある事を、
科学的根拠と、
実質的な数字を示して話して下さいました。
なので、信憑性は限りなく高いと感じました。

このブログは、
魚釣りやその周辺に横たわる諸問題を、
忖度無く伝えたいと思っています。

が、その事で魚が嫌いになったり、
釣りの業界や、
漁業者が批判を受けたりする事は、
絶対に避けたいと思っています。

我が国は、世界に誇る海洋国であり、
世界に誇れる釣り文化もあり、
守り育てられる漁業を実践できる、
唯一の国だと確信しているからですグー

その為には、
どうにかして新たなプラスティックの、
生産と流通を抑えていく
必要があるでしょう。

ポイントの1では、
既に海に漏れ出したプラゴミは、
我々の予想範囲を、
大きく超えているであろう事、

その事をお伝えして閉じたいと思います。

次回は、ポイントの2として、
我々釣り人が、海や魚のためにできる事や、
釣具業界の明るい未来に向けて、
提言したい事―

その事について、
皆さんと一緒に考えたいと思います。
少しだけ日も開けて、お伝えしますねスマイル





 







2021/08/21 9:06:01|釣魚料理
八丈島の嬉しい頂き物を料理する
一昨日に続いて、八丈島ネタです困った

八丈島では、
島の方々から色んな美味しい物も戴きます。

時には、大漁だったからと、
思わぬ海の幸を、
漁師さんが、ほいと手渡してくれる事もあります。

3年前はクルージングで、
ムロアジの棒受け網漁を見せて戴いた折りに、
網に入って来たと云う、
カンパチを丸々一尾、戴きましたポカン

70aは越えてたから、
なかなか立派なサイズでしたね〜
4〜5`はあったんじゃないかなあ・・・

ムロアジ漁で捕れたカンパチなので、
漁獲ではなく、事故みたいなものですから、
お金にはなりにくいんですよ。
実はね・・・困った

これが釣りだったら、メチャ嬉しい獲物なんですが・・・

そして、別の年には、
上の写真の魚を戴きましたニコニコ

このお魚、分かりますよね〜
じゃーん、キンメダイ魚ですよ。
しかも、この大きさ凄いでしょびっくり

なのに、魚の姿で戴いても、
なかなか料理できる人がいない訳です。
と云うか、料理はできるんでしょうけど、
食べられる形に捌ける人がいない―

と、云う事で、
結局、矢を向けられるのが、
釣り師である、ワタクシなのです。

魚を戴くと、お決まりの様に、
ニヤニヤしながら、手渡されますウィンク

立派なキンメですから、
お刺身でいきたいのは山々なれど、
そこはやはりキャンプですから、
生食には、気をつけなきゃいけません。

であるならば、
キンメは煮魚が旨い訳ですヨダレ
子ども達にも、食べさせてあげたいですもんね照れ

じゃあ、捌かせて戴きましょっチョキ

先ずは鱗を引いたら、
次は三枚おろし(右写真)にします。

こういう作業には、
子ども達も興味津々、
ガッツリ食い入る様に見られちゃいます困った

三枚おろしした半身を、更に3割りにします。
班が5つあるので、計6割りになる算段ですが、
1割り余りますよね。

これは、こっそりリーダー達に食べさせたいので、
6割にする訳です。

それに、骨の付いた切り身が余ってますよね。
もちろん、この骨から旨味が出る訳だし、
骨の間にある身や、
頭も二つに割って一緒に炊けば、
かぶと煮もできるじゃないですかぁびっくり
なので、捨てるのは鱗とエラと内臓のみです。

これをどうやって炊くかと云うと、
失敗しない黄金比があるんです。

醤油・砂糖・お酒を等割りにする事―
1:1:1の割合で同量使うんです。

が、砂糖がない時は、コーラを使います。
また、日本酒がない時は、島の焼酎にします。
後は生姜を1個、皮を付けたまま薄切りにして、
煮汁にぶちこむって、かなりワイルドな手法スマイル

基本野外料理ですからね。
落とし蓋はアルミホイルを被せる事で対応しますグッド

麦茶を作る用に、ガスコンロは指導者テントにあります。
必ず煮汁が煮立ってから魚を入れて、
中火で炊くこと20分―

この間、絶対に魚を弄ってはいけません
時折、煮汁をスプーンで掬って、
キンメにかけてタレを纏わせるくらいです。
火を止めたら、さまします。
余熱で更に味が染み込むんですチョキ

これを夕食時に、
みんなで味わうんですよ嬉しい

いやあ、うまいっすよ〜ラブ

けれど、当然ですが、
毎年戴ける訳ではありません。

って事は、喰ってない子も、
実はいっぱいいるんです困った

是非、キンメ喰ってみたい子は、
来年一緒に八丈に行きましょーびっくり

但し、山梨の中学生に限りまーす幸せ





 







2021/08/20 9:06:01|読み物
不定期連載 第二弾 『やどかりくんのお引っ越し』X最終回
昨日、
新型コロナウィルスの1回目のワクチン接種でした。
受付から接種までもスムースで、
注射自体は、全く問題ありませんでした。

が、今日は打たれた方の腕に、
若干痛みがあります。
が、感染拡大が続いていますから、
安心感を得た気がします。

これから1回目の接種となる方々、
余り心配なさらずに、安心を得て下さいませ。

と、云う事で、
今日の投稿は、オリジナル童話の第二弾、
『やどかりくんのお引っ越し』の、最終回です。

ゴミとなった、養殖いかだ用のブイにぶつかって、
危ないところを、
ゴンズイの兄弟達に助けられた、
やどかりくんとチャックの二人―。

でも、こんな危険を予測していたかのように、
ゴンズイの兄弟達に、
二人のサポートをお願いしていた存在があったのです。

最終回は、
この大きな存在が誰なのか―
と、二人の旅の終結までを語ります。
途中で「章」が、変りますが、
二人の旅の行方を、どうか確かめてあげて下さい。

では、最終回のはじまりはじまり〜びっくり

実は、ゴンズイ兄弟たちに
応援をお願いし てくれたのは、お月様だったそうです。

半分 だけ見えている時に、
お兄ちゃんに、こう声 を掛けてくれたそうです。

「お兄ちゃん、あなたはたくさんの兄弟を 守ってえらいわね。
 お兄ちゃんにお願いがあ るのだけれど・・・」

そう言いながら、
今日から次にお月様が見 えなくなった次の朝、
二つ向こうの潮だまり から、
背中にイソギンチャクを担いだやどか りが、
ここにやって来ることを教えてくれた のだそうです。

そして、もし二人に身に危険がせまったら、
兄弟みんなで助けてあげてね。
と、お願いを していったそうです。

だから、潮の満ちるのを待って、
みんなで 二人を見ていたこと。

大きいブイが流れて来 て、
家が止まってしまったのを見つけて、
駆け つけたことを話してくれました。

「やどかりくん、やっぱりお月様はすごい よ。
  そして、みんなも最高だよ」。

チャックは、
あらためてゴンズイ兄弟たち にお礼を言いました。

やどかりくんは、目にいっぱい涙をうかべ て、
ずっと、ありがとうを、ただくりかえし ました。

潮が引いた磯を見ると、
たくさんの 貝が二人を呼ぶようにこっちを見ています。

二人は、ゆっくりゆっくり、
今の家と一緒に 潮だまりのふちにに立ちました。
空がうっす ら赤く染まって来ました。
お日様も、やさし く磯を照らしてくれました。

5・これからも友だち

やどかりくんは、大きい方のツメを立てた り、
横に当てたりしては、
貝の入り口の大き さをはかっていました。

どうやら、ツメがも のさしになっているようです。
そして、時どき貝をトントンと叩いていま す。

トントン、誰か入っていますか?
どうや ら、
元の住人が貝の中に入っているか確かめ ているようでした。

やがて、今の家よりひと まわり大きい貝を、
二つ選び出しました。

そし てチャックに、どっちが好きな貝か聞きまし た。
一つはホラ貝、もう一つはアカニシ貝で した。

チャックは、アカニシ貝はちょっとごつご つしていて、
おしりが痛くなりそうな気がした ので、
ホラ貝の方を見てこう言いました。

「オレ、こっちがいいな」。

「うん。じゃあ、こっちにしよう」。
と、言うやいなや、

やどかりくんは、スル ッと体の全部を、
今の家から抜いて裸になり ました。

「うわっ。ホント大きくなったな」。
と、驚いたようにやどかりくんを見上げま した。

何しろ、初めて会った時には、
家が余っ ちゃうくらい小さかったのに、
今目の前にい るやどかりくんは、立派な体でした。

そして、 新しい家をすぐ横に置いたまま、
チャックく んのくっついている部分を、
ツメでちょんち ょんと、しげきするとあら不思議。

チャック の体は、ぽろんと、前の家から離れました。
すかさず今度は、新しい家にチャックを乗っ けると、
再び足もとをちょんちょん・・・。

「これでいいかい?」
チャックの方が先に引っ越しが終わりまし た。

足もピタってくっついて、
凄く座りごこ ちがいいのです。バッチリです。

「じゃあ、お邪魔しまあす」。 と、言うと、
おしりから、新しい家にするっと、
あっという間に入ってしまいました。

「引っ越し終了。お疲れさまでした」。
やどかりくんは、チャックをねぎらうよう にそう言って、
続けて言いました。

「ありがとう。チャックくん。
 これからも、 ずっと友だちだよ。よろしくね」。

「おう。あいぼうヨロシク」。

チャックは照れくさそうにそう返しました。
空には一番星が輝きはじめました。
お月様 の見えない空に、
お星様がいっぱい輝き始め ました。
これからも友だち・・・。

6・ひとりじゃない

「疲れたね」。

「おう。疲れた」。

二人の短いやりとりがあった後、
やどかり くんは、つぶやくようにチャックに話し続け ました。

「ぼくね、チャックくんが唯一の友だちだ って思っていた。
 もちろん、今もそう思って いるけど、
 ホントは唯一なんかじゃなかった ね」。

「みんなぼくらを助けてくれた。応援して くれた。
 それが、イチバン嬉しかったんだ」。

「そうだよな。
 この海は、友だちでいっぱ いだ。みんな大好きだ」。

「きっとね。お月様、
 ぼくらにそれを伝え たかったんだろうね。
   すごく実感したよ」。

 「そうかもな・・・」。

見上げた空には、満天の星。
でも、この星 も、お月様とお日様の光で輝いています。

海 にいる命の星も輝いています。
二人の新しい マイホームは、
海の仲間達がプレゼントして くれた、
大切な、大切な家― 。

これからも、 みんなで支えあって生きていきたいね。

おしまい



いかがでしたでしょうか。
この地球で生きている命は、
みんな繋がりあって、支え合って生きています。

大きな大きな宇宙の中の、
ちいさなちいさな地球と云う星は、
太陽と、月の導きを受けて呼吸しています。

我々人間も、ちいさなちいさな地球の中の、
ちいさな存在にしか過ぎません。

でも、我々人間が知恵と勇気を結集すれば、
これからも、ずっと地球は青く輝き続けるでしょう。

拙い作品でしたが、
少しでも、皆様の心に響くものがあったなら、
とっても嬉しく思います。

最後まで読んで戴き、
本当にありがとうございました。