ヒュン、ヒュン・・・
夜明け前の海岸に、風を切る音が響きます。
周囲はまだ暗い時間帯です。
東の空が白んで来る頃には、
周りは海に向かってキャストを繰り返す、
横並びのアングラー達の列が、
はっきりと見えて来ます。
この海岸は、
静岡県の三保の海岸一帯です。
使って居るのは、おおよそが同じルアー
ピンクやブルー、ライトグリーンに輝く
1オンス前後のメタルジグでした。
因みに
1オンスは28グラムです。
この驚くほど使用率が高いルアーの名前は、
D社の
『ファントムU』と、云います。
今でも驚くほど根強いファンが多い、
割と安くって、釣れるジグとして一世を風靡しました。
アングラーの狙いは、ほぼ
ワカシです。
三保では、
ワカナゴと呼ばれていましたね。
どちらも、
ブリの幼魚の時の呼び名です。
が、時折、
シイラや、ヒラメ、カンパチなども、
ヒットして来る事があって、
兎に角、売れたルアーの筆頭でした。
ところで、この
ファントムUがバカ売れした頃、
自分は、静岡県清水市(当時)の釣具店の、
スタッフをして居りました。
地元山梨のお店から、この清水のお店に異動になって、
間もなくの頃だったと記憶しています。
割と安価なルアーではあったのですが、
うかつに売り場に出してしまうと、
万引き等の被害を被ることさえあったのです。
なので、鍵の掛かるショーケースに入れて、
お客様にその都度お渡しする形で売っていました。
入れても入れても、あっと言う間に売れてしまいました。
売れるカラーは、
ピンク、
ブルーの順で、
ほぼ、そればっかり
ですが、メーカーの在庫も残っていないので、
ともすると2オンス以上あっても、
カラーが好みでなくっても、
買ったもん勝ち―
みたいな感じで、まあ売れましたね〜
今みたいにシングルフック・ダブルフックではなく、
トレブルフックオンリーの潔いルアーです。
この頃はまだ、
『サーフジギング』と、云う言葉もなく、
ワカナゴのルアー釣り―にはコレ―
条件反射みたいな売れっぷりでしたね。
ロッドは、これまた走りのシーバスロッド。
10フィート前後の物が、
振り出し、並継ぎ問わず、売れて居りました。
初夏から、土用波が起きる頃まで、
三保の海岸には、ワカナゴ釣り師が集結―。
従来の片浜仕掛けで釣る方も多いので、
浜辺は毎日フェスティバル(オマツリ)の嵐―
でしたね〜
だから場所取りも凄くって、
夜明けが待ちきれなくって、ヒュン、ヒュン、
なのでした!!
あれからもうウン十年も経つけど、
未だにあの
ファントムU以上に売れたメタルジグを、
一度も見たことがありません。
恐るべき、シンプルイズベストのルアーでありました。
きっと、まだ使っている人も多い事と思います。
今日は、超ベストセラールアーのお話しでした。