梅雨が明けて、
各地から海開きの話題が続々届いていますね。
中でも
『奇跡の一本松』で知られる、
岩手県陸前高田市
『高田海岸』が、
11年ぶりに遊泳可能になった・・・
そのニュースは、やはり嬉しいものでした
関係者の方々の、取り組みには頭が下がります。
無事にその日を迎えられたことに、
敬意を表さずには居られません。
一方で、遊んで居た世代は、
やはり、震災を経験していない子ども達の姿―。
本当の意味で海が開くには、
まだもう少し時間が掛かりそうですね。
さて、今日は
『やどかりくんのお引っ越し』の、
2回目を投稿させて下さい。
初回では、
ある朝、相棒のイソギンチャクの
チャックを起こして、
これから、引っ越しの為の貝を探しに行く―
そう宣言した、
やどかりくんでした。
が、一心同体のチャックは、行き先を聞いて反対します。
大きな岩場を越えられたヤドカリはいない―
友だちの
岩ガニ「ゲンさん」から聞いていたので、
無理だと、やどかりくんに再考を求めたのでした。
が、やどかりくんは、
とても自信に満ちた表情で、チャックに伝えます。
「今日はこれから潮が満ちて、岩場が海に沈む
だから今日しかないんだ!!」
と、チャックを説得し、
「僕の目になって手伝って欲しい」
それは、チャックとずっと一緒に居たいと云う、
強い信頼と友情に満ちていました。
ここまで、やどかりくんが自信を持った理由が、
どうしても気になったチャックは、
その質問を、やどかりくんにぶつけたのでした・・・
と、ここまでお話ししました。
それでは、やどかりくんに自信を与えた存在とは?
第2回のはじまりで〜す!!
2・お月様から教えてもらった
家がだんだん小さくなって来て、
いつ引っ 越しをしようかって、
やどかりくんが考えて いた、ある日の夜の事でした。
ふっと空を見上げたら、
まん丸のお月様が 出ていて、
やどかりくんは、
お月様に引っ越 しの相談をした事を話してくれました。
その時チャックは、ぐっすり眠っていたの で、
起こしちゃ悪いって思って小声で話した のに、
お月様の声は、
やどかりくんにはとて も近くに聞こえたんだ― 。
って、大きなツメ を振り上げながら言いました。
「お月様、もう今の家では、
体がきゅうく つになってしまったんです」。
「だから、別の家 を探して引っ越したいんです。
でも、チャッ クくんとはお別れしたくない。
ぼくは、どう したらいいですか?」。
「まあ。やどかりくん、ずいぶんと大きく なりましたね」。
「あなたが生まれた日の夜の事 を、
私は今でもはっきり覚えていますよ」。
「本当ですか?お月様!」。
「ええ、もちろんですとも。
あなたのお母 さんは、いっぱいあなたのきょうだいを
お腹 に抱えてここで卵を産みました」。
「お母さんの事、知っているんですか?」。
お月様は、やさしく微笑んで、うなずいて くれました。
「あなたも、あなたのきょうだいも
みんな ここから海に流れていったのよ」。
「夜の海にゆ らゆらとね・・・。
きっと、それからの記憶 は、あなたにはないわよね」。
「はい。気が付いたら、この磯で目を覚ま していたんです」。
「ながーい旅をしていたのよ」。
お月様は、やどかりくんが生まれて、この 磯に来て、
明るくてひょうきんなチャックと 出会って、
一緒にがんばって生きて来た事を、
ずっと見ていた― 。
と、話して聞かせてくれ ました。
「あなたは、チャックの事が大好きなのね」
「はい。ぼくの唯一の友だちなんです」。
「では、いい事を教えてあげましょう」。
やどかりくんは、
お月様の教えをひと言だ って聞き逃さないように、
勇気を出して家か ら頭を出しました。
お月様の光がやさしく包 んでくれました。
「わたしが、だんだんやせたり、
また丸く なったりしている事を知っているわよね?」。
「はい。でも、いつも居てくれていますよ ね。
見えない日でも、お月様を感じる事がで きます」。
「ありがとう。うれしいわ」。
「そう。ここか ら見えない日でも、
わたしはあなたたちを見 ているのよ」。
「今、わたしはまん丸だけど、見 えなくなるまで、
30回の夜が明けるまでか かるのよ」。
「30回ですか?」
「そう。今日から30回目の朝は、
わたし の力で潮の流れが大きくなるのよ」。
「その日の 朝、もし晴れていて風がなかったら、
あの岩 の向こうに行ってみなさい」。
「あなたの体に
ぴったり合うような貝がたくさんあるわ」。
「でも、あの岩は高すぎて、乗り越える自 信がありません」。
やどかりくんもまた、あの岩は怖いと思っ ていました。
ましてや、チャックくんと家を 担いだままでは、
重くて無理だと、お月様に 打ち明けました。
するとお月様は、にっこり と微笑んで、こう言ったのです。
「大丈夫。あなたと、チャックになら出来 るわ」。
「その日は、だんだん潮が満ちてくるの よ。
朝は、なるべく早く出発なさい」。
「最初の 岩を越える頃、二人の足下は海に隠れます。
そしたら、勇気を出して大きな岩を目指して 泳ぐのよ」。
「チャックがきっと浮き輪になって くれるわ。
まっすぐ進んでいるかチャックに 聞きながら泳ぎなさい」。
「岩に着いたら、しっ かりとつかまるのよ」。
「はい。お月様。
ぼく、チャックくんと一 緒にがんばってみます」。
そう言って空を見ると、
もう東の空が明るくなって、
お日様の光が、海にひと筋の道を 作りました。
その道は、まっすぐあの大きな 岩に向かって伸びていました。
「あの道を行けばいいんですね」
お月様は、やさしい微笑んだまま、
ゆっく りと西の水平線に身を沈めていきました。今日はここまでにします。
いかがでしたでしょうか・・・
やどかりくんは、たくさんの兄弟たちと、
ある満月の夜に生まれて、
幼生として、
プランクトン生活が始まりました。
が、兄弟の事も、自分自身の事も、
全く覚えていません。
そのお母さんやどかりの姿を見ていたのは、
お月様でした。お月様は、何でも知っています。
そして、長い長い旅の果てに、
この岩場に辿り着いたやどかりくんは、
本能で最初の家を見つけ、
やがて、相棒のチャックと出会います。
チャックもまた、お月様に見守られながら、
プランクトンとして海を漂っていたのです。
でも、家を変えることは、
チャックとのお別れも考えなきゃいけない・・・
そんな思いを優しく聴いてくれたお月様―
そして、やどかりくんに
チャックと一緒に新しい家を探しに行きなさい―
と、優しく、力強く、背中を押してくれました。
潮汐は、地球と、月との引力によって、
続いている海の呼吸です。
おおよそひと月のサイクルで、
満ちて、欠けて、無くなって、でもずっとそこにある。
ずっとそこに居てくれる・・・
きっと、海の生き物たちにとって、
お月様は、お母さんであり、神様なのかもしれません。
釣りをする私たちも、
足もとでは、こんな命の営みや繋がりが、
あるんだって事―
決して忘れずに釣りをしないといけませんね。
さあ、これから二人はどうやって、
困難を乗り越えて行くのでしょうか・・・次回もお楽しみに