新聞、雑誌等に書いたもの、どっかでしゃべったこと、書き下ろし……の置き場です。 主に文学・歴史関係が多くなるはずですが、何にでも好奇心旺盛なので、どこまで脱線するか?!。 モノによっては長いのもありますが、興味のあるところから御覧下さい。
 
2013/06/29 9:54:09|本・読書・図書館
尾道からの「サーフボード」
いつも刊行されるたびに送っていただいている広島県尾道のエッセイ誌「R」が、創刊40周年になったといって、記念エッセイ集「サーフボード」をいただいた。
29人の自選エッセイ99編、335ぺーじという立派なものである。
どこも維持(意地?)・継続は物心ともに大変だろうが、持続は力なりである。

代表発行人は「R」の木村大刀子さん。
「R」には、娘さんの亜矢さんもしばらく前から参加されている。
版元は編集工房ぱぴるす。
ご主人で、広島県詩人会の中心でおられる高垣憲正さん。
年代的には私よりかなりの先輩だ。

30年近く前、このご家族とおひき合わせくださったのは、福山に住んでいた高田英之助、寿美子夫妻である。
夫妻は、知る人ぞ知る、毎日新聞の甲府支局にいた時の縁で太宰治の結婚の下仲人をしたひとである。

英之助さんは井伏鱒二の中学以来の後輩である。
寿美子夫人は甲府育ち、甲府高女の出身である。
井伏さんの依頼で、高田さんは甲府で自分と縁談が進んでいる寿美子さんの友人のお姉さんという伝手で、太宰と石原美智子さんを結び付けることになる。

太宰のことを伺いたくて、初めて福山に高田氏を訪ねた時、広島の各地域で熱心な芸術文化活動をしている様々な方々を紹介していただいた。
そこから福山の文学館なども誕生した。

なかでも懇切にしてくださったのが高垣・木村ご夫妻だ。
刊行したものをいただいたり、差し上げたり、その後、長く淡い交わりを30年近くも続けている。
で、私は、何処の土地にもいる、地位や名誉や利益ではなく、地域を地盤から支えようとする地道な活動をするおひとりとして、ご一家を尊敬している。

「猫町文庫」も財政基盤や人的態勢が苦しいが、もうしばらくは歩いてゆきたいものだ。
甲府から「猫町文庫」ありと意識されるようになるといいなあ。
私も寝込んだりしていられない。
勉強もしなければならない。







2013/06/27 8:51:55|その他
迷える子羊・ストレイ・シープ
講師室で
「今の世の中批判みたいなこと言うと、学生は、またかって顔するんですよね」
「考えていないんでしょうか?」
「長いものには巻かれろ、流れに任せろ主義が充満していますね」
「高校までの生育環境の中での、親や教師の言動の影響も大きいでしょうね」
「批判能力がないというか、批判精神を持たないというか。世の中がよほどひどくなってからでないと気付かないのでしょうかね?」
「そういうことを考えないようにしている、とかね」
「考えてもしょうがないし、と。大学受験学力向上だけやってきたのでしょうね」
「大学の中でも、同じテーマで正反対くらいに異なった見解をあっちとこっちで講義していますからね」
「学生には偽物も本物も、現実も理想も区別がつきませんね。世の中出てから、それを体感することになる」
「その時は迷える子羊、ストレイ・シープですよね」
「学生諸君の気が好いだけに心配です」

「学問的な関心も深められないし、実務的な能力を高められないし、この期間にしかできないことを思いっきりできるわけでもないし、かわいそうだな」
「大学入ってやれやれとなると就活ですものね」

富士急行線:大月からの乗客は増えているようだ。







2013/06/23 8:40:48|本・読書・図書館
前期の終了間近
大学の前期の成績評価の時期が近づいてきた。
恒例に従って、レポートにするのか、テストにするのか、期日も決めよとくる。
私は最終レポートだから、そのテーマと、条件、締め切りなどを大学教務部に連絡する。
遅れる者が必ずいるから、いつ、どこまで受け付けるか決めて、私への直接手渡し組と、教務のポスト投入組に分かれるだろう。
ポストの設置も頼んでおかねばならない。

その前に、パンフレットに仕上げた「ブックトーク」を彼らに配布せねばならない。
提出させたものは共有させようという試みはいいが、なかなか大変である。
学生もそのようだが、自分も楽しみではある。

前の週の出席表に書かれた彼らの質問や反論、回想や勘違いを、次の時間の冒頭で補足するのも、楽しいものだ。
一方的な講義より為になるのではないか。

本を読むことについての認識、学校・公共とりまぜた図書館の利用については、学生それぞれでずいぶん格差があるもんだと思う。
成長過程のさでもあると思う。
やがて教育に携わることを第一目標としている彼らだから、伝えるべきところは伝えておきたい。
これからの子どもの学習(教授)の在り方が少しでも改善してゆくように、と。







2013/06/18 8:00:48|文学
山梨桜桃忌

山梨県富士河口湖町の御坂峠の碑前、天下茶屋で恒例の山梨桜桃忌があったので、これまた、恒例に参加してきた。
数えて36回になるそうだ。
昨年は体力回復中で、無我夢中の参加だった。
今年はもう少し良い。
気温が20度を下回るほどで肌寒い。

原きよさんの「富嶽百景」朗読。
スペシャルゲストに新宿「風紋」の林聖子さん。
晩年の太宰治と山崎富栄の様子、さらには死後発見された際の状況を淡々と生々しく語った。
たいがいそうだが、女性側が引きずり込んだ「悪者」になっていて、富栄も気の毒だ。
依田弘さんが甲府の歴史と町名由来について話をする。

作品と生活を踏まえると、「樋口一葉を歩くー山梨編」の太宰治版の写真と解説の甲府の街の案内集ができそうだ。
山村さんの昭和40年代の写真、また、三沢氏、橘田氏ほかに協力を得られれば。

いつもの人に新しい人も加わって、久しぶりの人もいて、残念ながら、欠席になる故人も思い出されて、いつも気持ちの改まる桜桃忌である。







2013/06/16 10:00:37|本・読書・図書館
今年のブックトーク
大学の講座も前期の中間に差し掛かってきて、高齢のブックトークを書かせる時季だ。
小学校低学年・中学年・高学年、中学生、高校生と対象を決め、紙上でトークしてもらう。
学んだことには「共有化」が大事だと考えているからやっているのだ。
提出したものは、なるべく互いに聴いたり読んだりさせたい。
これでこそ、個々人に差をつける「学び」とは異なる学びの成果、「おまけ」が出てくるだろうから。
整理・編集、刊行、配布までは大変だが、楽しみにしている学生もいるようでがんばりたい。

教員をやっていたときにも、私は、なるべく提出物をハンコだけで返さず、プリントにして互いに読めるようにすることを心掛けてきた。
発表等の言語活動も、聞く者がどう聞くかを重点的に見てきた。
コミュニケーションとは,「話す」「聞く」が交互に交代するのではなく、両者が同時的に存在するのがありようだと思ったからだ。
両者の「間」に、何事かが生まれる、これこそが望ましいコミュニケーションだと思うからだ。
一方から一方への「伝えあい」ではない。
コミュニケーション不足とは、この伝えあいができない人が多いことだ。
さんざん議論しても新しいものは生まれない。
最後は「賛成でいいや」とか投げやりな気持ちで議論を終える。
これが実情だ。

学校現場でもこの趣旨に賛同してくれて、「聞く力」を育てる研究が一時は大分流行った。
今は低調だと思う。
唱えるに易く、気長に実践し続けることが難い考え方だから。

第二次教育再生会議がどんな方向に行くか。
あんまり「実用」「国際化」「紙上学力」「経済」ばかりを重視すると、子どもの育ちにまたまた問題が起こって来はしないか。

写真は季節違いの都留。