新聞、雑誌等に書いたもの、どっかでしゃべったこと、書き下ろし……の置き場です。 主に文学・歴史関係が多くなるはずですが、何にでも好奇心旺盛なので、どこまで脱線するか?!。 モノによっては長いのもありますが、興味のあるところから御覧下さい。
 
2010/09/11 21:30:09|出版「猫町文庫」
飯野正仁「戦時下日本の美術家たち」第1輯 ついに出る!!
すでにお知らせしたとおり、筆者の粘り強いん校正の末、標記の本がついに出た。
質素な作りである。
部数も少ない。
定価も、えっ、1260enn?
こんなに安いの?
先ずは買っておくにこしたことはない。
猫町文庫
email:fuku@nns.ne.jp







2010/08/31 21:34:08|出版「猫町文庫」
飯野正仁「戦時下日本の美術家たち」第1輯 近日刊行!!
他に類のない労作である。
著者は現在もこのテーマで月刊誌に連載をしている。
関心のある方には必需品だと思う。
サムネール的だが、珍しい戦時下の図版(モノクロ)も数多く収録されている。
しかも、著者と版元(私だが)との意図が一致して、質素で安価なつくりだ。
2010年9月中旬刊行予定
品切れの前にご予約を!!

B5版180ページ
定価:税込1,260円

(内容)
「戦争は惨の惨たるもの」−大陸従軍画家は何を見たのか−
南京事件と従軍画家たち 1 中川紀元・住谷磐根・小林喜代吉
南京事件と従軍画家たち 2 木村伊兵衛・清水登之・西条八十
「通州事件」と朝井閑右衛門
南方従軍画家 1
南方従軍画家 2
南方従軍画家 3 伊東深水−戦時下の「美人画」
大陸従軍画家 1 原精一 1
大陸従軍画家 2 原精一 2
事変下の美術 向井潤吉と阿部合成
戦時下、美術は<空白>だったのか 小磯良平・向井潤吉ほか
正確な眼と技術 小磯良平
“狙撃”する描写力 宮本三郎
<御物>としての戦争画−御府献納−
悠久の大義に生く 藤田嗣治
悲願の画家 阿部合成
「事」ではなく「物」を描く 鶴岡政男 1 戦時下を生きる 1
「事」ではなく「物」を描く 鶴岡政男 2 戦時下を生きる 2
「事」ではなく「物」を描く 鶴岡政男 3 戦後を生きる
反転する視線 山下菊二
百九十一番居 玉村方久斗
静かな声 浅原清隆
戦時下美術インフレーションの諸相


(著者)
飯野正仁(いいの・まさひと)
 美術史家。1954年、甲府市生まれ。京都大学文学部(美学美術史学専攻)卒。同大大学院文学研究科博士課程修了。山梨県立美術館学芸課長および同文学館資料情報課長を務める。現在、山梨英和大学と日本装飾美術学校非常勤講師。「戦時下日本の美術家たち」を月刊『あいだ』に継続連載中。
ブログ「猫の後ろ姿」http://profile.ameba.jp/e-no4765/


(問い合わせ・注文先)
発行所 猫町文庫
〒400-0007山梨県甲府市美咲2-15-30
055-253-7732 or 090-1991-5976
E-mail:fuku@nns.ne.jp
http://nekobunko.web.fc2.com







2010/08/15 17:18:40|本・読書・図書館
猫町古本市(第1回)
こうふのまちの芸術祭2010≫の関連企画「猫町古本市」に、お手持ちの古書、著書、紙もの等を出品しませんか。どんな本でもけっこうです。9月18日までにcocochi宛に搬入、または宅配便でお送りください。

 その際、付箋に出品者名、売値を鉛筆で書いて本の奥付に貼付してください。後日、清算いたします。残品は9月21日17:00までに搬出してください。

 会期中の冷やかし、購入、ブツブツ交換も、もちろん大歓迎です! 専用の駐車場はありません。お近くの「P」をご利用ください。

2010年9月19(日),20(祝),21日(火)11:00〜18:00
ところ:cocochi 甲府市丸の内1-19-21 2F 055-287-8619
勧進元:「猫町文庫」


>✰お問い合わせ・連絡先
 090-1991-5976(福岡哲司)または
 090-4126-4205(飯野正仁)宛









2010/07/14 17:22:52|本・読書・図書館
猫町文庫創刊!
広義の文芸誌「猫町文庫」が創刊され、第1集が販売されている。
意欲作揃いである。

『猫町文庫』第1集 内容

(エッセイ・ほん)
都築隆広 ペーパー・ザ・レクイエム
福岡哲司 学芸員と司書との激論
福岡哲司 図書館は図書館らしく

(エッセイ)
福岡哲司 迷子の迷子の三太郎やーい
磯部 敦 警句小考一漱石書簡をとおして
飯野正仁 宮下太吉の墓のこと
春草亭露丸 廓のおうわさ「二階ぞめき」

(小説)
水木 亮 浪花節
水木 亮 台風
五十嵐勉 夏の光像
三神 弘 葡萄売りの娘

(資料紹介)
中村星湖文壇回想集(1)
  その頃のこと−ゴーゴリの「肖像画」で与へられた二葉亭の教訓
  抱月と如是閑

(研究)
福岡哲司 深沢七郎への旅(1)
  「生家としての甲州道中甲斐府中(甲府)柳町本陣」

(催し案内)
川上澄生 「古今東西をあそぶ・木版画の世界」 世田谷美術館
「中村不折と明治の書―文豪たちとの交流を中心に」 台東区書道博物館
「マネとモダン・パリ」 三菱一号館美術館
「新創」なった根津美術館

(書評・新刊旧刊)
兵藤裕己『〈声〉の国民国家―浪花節が創る日本近代』
水木 亮編著『「コメディ・オブ・イエスタデイ」の二五年』
堀田善衛『ゴヤ』
堀江敏幸の本

(紹介・本の一気通巻)
若者よ、君らは生き延びて欲しい! 僕らは、そんなに長居はしないから。

(写真・コラム あの街この人) ハノイ(ベトナム)

第1集:B5版160ページ 定価1、000円+税
ISBN4-904797-01-3
ご希望の方は「猫町文庫」編集所へ

http://nekobunko.web.fc2.com/







2010/03/09 22:18:27|文学
甲府発の『新体詩歌』大ヒット!
 近代初頭、甲府は、その後大ヒットとなる出版物を世に送り出す。
明治15年(一八八二)10月3日第一集を刊行した『新体詩歌』である。
編輯兼出版人は北都留郡甲東村(現上野原町)百十一番地に寄留する「和歌山県平民」(後掲の翻刻本には「士族」とするものもある)竹内隆信。
定価が12銭。第一集には発行所の記載はないが、「発兌書林」として「東京 山中市兵衛、同吉川半七、同小笠原書房、大阪 柳原春兵衛、同岡島新七、静岡 廣瀬市蔵、甲府 徴古堂」が挙げられている。

 時代は近世期までの和歌、俳諧(発句)に替わる「新体」の詩歌を創出しようというブームが起こっていた。
その皮切りが我が国の近代文学史上名高い『新体詩抄』(明治15年7月刊 外山正一・矢田部良吉・井上哲次郎共著)である。
竹内の出した『新体詩歌』はその三ヶ月後の刊行である。

 以後、竹内隆信の『新体詩歌』は、明治15年12月5日に第二集、16年(原本に月日欠)に第三集、同年6月22日に第四集、同年(原本に月日欠)に第五集を刊行して完結した。

第二集には「甲府書肆 徴古堂梓」とある。
「梓」は出版の意だ。
「発兌(はつだ)書林」は第一集と変わらない。
第三集は「製本発兌 徴古堂」で「売弘(うりひろめ)書林」が「東京 山中市兵衛、同 吉川半七、同春陽堂、大阪 岡島真(ママ)七、静岡 廣瀬市蔵」が挙げられる。
第四集は「発兌書林」が「東京 山中市兵衛、同吉川半七、同○々堂、同春陽堂、甲府 徴古堂」となっている。
第五集は「製本発兌」が徴古堂で「発兌書林」の記述はない。奥付の記載も昔はおおらかだった。

完結の後、明治17年、西山梨郡常盤町四番地(現甲府市中央)の「山梨県平民」内藤伝右衛門(温故堂)の手で翻刻される。「編輯兼原板主」は「和歌山県平民」竹内隆信である。翻刻版は合8銭になっている。

 その後、『新体詩歌』は各地で続々と翻刻され続けた。
以下、国立国会図書館のマイクロフィルムに収められている翻刻書肆である。

明治19年 和楽堂(東京)、三香堂(東京)、耕雲閣(大阪)、耕雲閣(大阪)、二葉堂(東京)、東雲堂(名古屋)、晴庭堂(東京)、金泉堂(東京)、有楽堂(東京)、鶴声社(東京)、三鱗堂(東京)、和楽堂(東京)
明治20年 鴻宝堂(大阪)、日吉堂(東京)、三香堂(東京)
明治21年 中金堂(東京)
明治24年 開文堂(東京)
明治32年 奥村金次郎(東京)

これらは内務省に正式に届けられた翻刻と見られ、「海賊出版」はこれ以上にあったかも知れない。
阿毛久芳氏の調査では、この他に明治19年の春祥堂版、20年の神戸船井弘文堂版、開文堂版、25年に井上市松版のあったことが知られる。
『新体詩抄』は『新体詩鈔』と一文字換えて明治17年に再版されていたが、後述するボリュームの点からも価格からも(『新体詩鈔』は35銭)、ブームを引っ張っていたのは甲府発の『新体詩歌』の方だったと考えられる。
しかも、課題は多く、生硬だったものの、「新体詩」としてリフォームすることで限られた層にしか愛好されなかった伝統的な長歌を読者に吸収しやすくすることに大きな影響力があった。
試みに第一集の収録作品リストを挙げると次のようだ。

○楠(くすのき)正成(まさしげ)桜井駅に於て正行へ遺訓の歌 ○直実敦盛を追ふの歌 ○月照の入水を悼みて読める歌 ○舞曲に擬して作る歌 ○自由の歌 ※顕理(ヘンリ)四世を読める ※ハムレツト ※玉の緒の歌 ※抜刀隊 ○花月の歌 ※ウルゼー ※大仏に詣でて感あり

著作権などない頃である、前掲リストの※印がそうであるように、『新体詩歌』収録作52編の詩歌のうち16編は『新体詩抄』からの再録である。
これは『新体詩抄』全作品19編の大半に当たる。

『新体詩歌』は軍歌につながる兵士や戦闘行為を歌った詩、勉学・信仰等人生訓戒詩、自然賛美詩、近代思想啓蒙詩、翻訳詩等からパッチワークのように構成されている。
一見「よせ鍋」風だが、本書の収録作品選定、編集の時点から読者に対する教育、啓蒙の意図のあったことを読み取る研究者もいる。

第一集「序」の中で小室屈山は「古今和歌集」仮名序、『詩経』、西洋諸国の詩を例に挙げ、喜怒哀楽の情を流暢韻律ある歌に表現することに変わりはないと言う。
また、現代の「語」によって詩を作ることの意義を強調している。

前述したような『新体詩歌』の際だった「増殖」ぶりは、このアンソロジーが学校の教材(または副教材)としてのニーズを十全に果たし得た証拠だろう。
前掲第一集の「発兌書林」の甲府徴古堂は無論のこと、吉川弘文館の創始者吉川半七はじめ、その多くが教科書出版、販売、取次をしている書肆だった。
前掲の井上市松版(明治25年)では、表題に「学園の信友」と付されている。

国木田独歩の『独歩吟』序にはこんな記述がある。

「『新体詩抄』出づ。嘲笑は四方より起りき。而(しか)も此(この)覚束(おぼつか)なき小冊子は草間をくぐりて流るる水の如く、何時の間にか山村の校舎にまで普及し、『われは官軍わが敵は』(抜刀隊)てふ没趣味の軍歌すら到る処の小学校生徒をして足並み揃へて高唱せしめき」

ここでいう「小冊子」は和本仕立て菊判(15・5p×22・7p)の『新体詩抄』よりも小型本(9p×12p)の『新体詩歌』の方がふさわしかった。

同時期の新体詩歌関係の出版には次のようなものがある。

明治20年、坪井正五郎ほか著『偶評明治新体詩歌選』、津田市松(大阪)
同年、植木枝盛著『新体詩歌自由詞林』、市原真影(高知)

※主な参考文献
阿毛久芳、「新体詩、その創造と受容の場」、岩波書店,『新日本古典文学大系』明治編12「新体詩聖書賛美歌集」、 二〇〇一年。
宮崎真素美、「『新体詩歌』の語るもの─文芸・政治・教育の交差する場所」、岩波書店、『文学』、二〇〇四年。
福岡哲司、「文芸、その『目的』化と泥み」、山梨文芸協会、『会報』第30号、二〇〇四年10月初出、山梨ふるさと文庫、『本の本』,二〇〇六年。