 御岳の金桜神社は金峰山に修行に入る修験者の根拠地の一つで、御岳川沿いの集落も「御岳千軒」と言われるほど賑わったそうでございます。 神社に属する社家が百七家、僧坊八か寺の他に宿屋、料亭、茶屋のほか、精進落としのための遊女たちもいたそうでございます。
女性で修験の道に共鳴するものもたまにはおりますが、女人禁制のお山に入って本物の山伏、法印になるというわけには参りませんので、拝み屋様、祈祷師として麓の庵に暮らす者もおりました。
集落はずれの無住の荒寺に住む三十代の女祈祷師がおりまして、お堂には蔵王権現をお祭りし、日夜念仏三昧で過ごしておりました。
村人には失せもの、悩み事、病、傷などでこの女祈祷師を頼りにするものも少なくありません。 特に祈祷師が調合して蛤の貝殻に詰めた膏薬は切り傷、やけどなどによく効くので評判で、遠くの村から求めに来るものもいたそうでございます。 なんでも山野の薬草や獣の肝などを調合したものだと言われておりました。軽いやけどなどだと女祈祷師は、
「膏薬を使うほどでもなかろう。おなごが欲情して出す白水を塗っておけばすぐ治る」
と教えるものですから、山仕事の若者がやけどでもすると、ことさら村の娘のところへ夜這いをかけたと言います。
ある時、村の若者が囲炉裏の自在鍵に袖口を引っかけて煮えたぎる大鍋をひっくり返し、男の大事なところに大やけどを負ってしまいました。 家の者があわてて若者を女祈祷師のところへ担ぎ込みました。 祈祷師が患部を開けて、おもむろに呪文を唱えた後に言うことには、
「この大やけどでは膏薬だけでは治りますまい。特別な秘術を施して進ぜるので奥の部屋に運んでくだされ」
ということでした。 言われるとおりにしたところ、祈祷師は、
「真言の秘術でもあり、荒療治でもある。家人も村の衆もはずして貰いたい。わらわも患者も声を挙げたりすることもあろうが、施術が済むまではゆめゆめ術を覗いてはなりませぬ」
とおごそかに言った。
家人たちが部屋を出ると、祈祷師は法衣の裾をくるりと捲って若者にまたがり、若者のものを自分の中にするりと導き入れたのでございます。 ひりひりが和らいでくると、祈祷師はここぞとばかりに白水をこすりつけ始めました。 さすがに若者も、
「拝み屋様、そんなに動かしては痛てえ、けんど、心地いい、痛てえ、けんど、心地いい」
とわめき始めました。祈祷師も、
「まだじゃ、術は始まったばかりじゃ、まだじゃ」
と気合いを入れて秘術を施しました。
若者は、それから何回か秘術を施され、やけども一皮むけてすっかり完治したそうでございます。
そういえば、女祈祷師の軟膏はあそこの匂いがするという噂でございました。(甲府市)
写真:仙峨滝
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