もう一つ私がグラナダに心惹かれる訳がある。 ここが愛読する詩人・ガルシア・ロルカの生まれ故郷の村・フェンテ・バケーロスに近いことである。 できれば、私は村を訪れたいと思っていたが、日本で調べた時には、ロルカの生家の記念館は夏季休館ということだった。
泊まったホテル・フェネラリーフェの従業員のホセがこの村の住民だったので確かめてみると、
「そんなことはないはずだ」
と言う。 彼は知り合いに電話して
「やってるはずだよな」
なんて言っている。 しまいに私がインターネットで取り出した資料を見せると、
「ええっ、夏季休館。そうなんだー。日本でそれがわかって、村の自分が知らないとは」
としょげている。 近所の人なんて、どこでもこんなものだ。
せめて村のたたずまいだけでも感じたいと思ったが、帰国の飛行機の時間の迫っている私に村を往復する余裕がなかった。 やはり、グラナダに住まなければ駄目なようである。
「いいさ、また、きっと来る。心をここに残しておくから」
と私。
「きっと、来てくださいよ。その時には私が案内しますから」
とホセ。
そうして、なぜだか男同士堅く手を握り合ったものであった。
せめてもの慰めにと、私はホテルからグラナダの街へ降りる坂の途中でロルカのポストカードを買い求めた。 ロルカのプロフィールに十字架を背負ったイエスとアルハンブラ宮殿の図柄が重なって、なんとも意味ありげだ。 詩集『カンテ・ホンドの詩』(一九三一年)、それに写真集も手に入れることができた。
店番をしていたモーロの血が混じっているように思われた女が、「ロルカ、ロルカ」と血眼になっている東洋人を奇異の目で見ていた。 写真:ロルカポストカード |