立冬である。 静かに雨も降っている。 眠れない夜の、しんしんと寒さをこらえる季節もほどない。 昔ほど家の窓窓を吹きつけるような激しい木枯らしも吹かなくなって、夜はとても静かである。 我が家あたりのように、車の進入が小型で住民の使用車だけになると、宵を過ぎると静まり返ってしまう。 時折、窓の下の歩道を通りながら奇声を発する若い人もいるが、それもめったにない。 心細い街灯だけが時折点滅している。 裏の大きな通りの車の音も殆ど響かない。 何処かで集団で暴走しているバイクの音が唸りをあげている。 追っかけるパトカーの音も殆どしない。 寒くなれば、根性のないことに、バイクも減ってくる。 たまに救急車のサイレン、鉄路の電車の響き。 この静かな夜を、私はどちらかと言えば好きだ。 そこはかとない幸福感さえ覚える。
昨日から、また、読み始めた吉田健一の訳詞集『葡萄酒の色』の一句一句が胸に沁み込んでくる。 シェクスピアのソネット〈十四行詩)連作は以前から好きだったが、久しぶりに読み返しているが、何ともいい。
来る春に向けて、少しずつ自分の思考や仕事を深めていかねばと思う。 編集している文芸誌「猫町文庫」の経済的基盤の底入れ、しっかりした掲載作品を見つけることもやってゆきたい。 「猫町文庫」は刊行の間の、エッセイ中心の広報誌(パンフレット様の)があってもいいのではないかなどと思いもする。 また、文章、記事集めに一人で悪戦苦闘してしまうだろうか。
冬眠じゃない、雌伏の時だ。 体調を飼いならしながら。 |