新聞、雑誌等に書いたもの、どっかでしゃべったこと、書き下ろし……の置き場です。 主に文学・歴史関係が多くなるはずですが、何にでも好奇心旺盛なので、どこまで脱線するか?!。 モノによっては長いのもありますが、興味のあるところから御覧下さい。
 
2012/12/17 17:15:04|その他
ざわざわと怖い
床屋政談、湯屋政談、酒屋政談は八っつあん、熊さん、それにもったいぶった御隠居さんのお得意だが、今でいえばさしづめブログ政談というところだろう。
なるべくせんに限る。オダをあげれば、それで何かが解決する訳ではないのに、精神解消効果が出てしまうから、よくない。
なるべくせんに限る。

が、今日はオダるぞ。
心配していた通り、えらいことになってきた。
私の周りのおちびさんたちの未来が、心底苦になってきた。

何しろ彼のお祖父さんは「ノーべル平和賞」だからな。
功績は日米安保? 沖縄返還?
代々の政治稼業。権力闘争を好む彼らが「平和」を求めるわけはあるまい。
担ぐ国民も。

国民自身のレベルにあった政治しか持てないという怖い真実。
政治も「負けられない闘いが、ここにある」と煽り煽られるスポーツイベントか? ぱっと火が着き、ぱっと風向きが変わり、すぐ忘れる。

こういう時にナチス党は合法的に、国民合意のもとに政権を掌握したんだろうな。東条英機は国民的人気者だったというし。







2012/12/16 9:55:16|艶笑譚・日本
赤貝

 亭主が赤貝を買ってきた。
 すぐにたらいに水をはって中へ入れる。
 それからというもの、朝に夕にたらいの赤貝を眺めている。
 女房は初めは不思議に思ったが、だんだん腹が立ってくる。
亭主「おい、俺のフンドシを洗ってくれよ」
女房「なにさ、赤貝にでも洗ってもらえば」


※葛飾北斎『男女畑(おめばたけ)』拙訳








2012/12/14 16:15:04|艶笑譚・世界
或るフィレンツェ人の意味ふかいしかし露骨な身ぶリ

 わたくしの一友人が人々のたくさんいる席で話したことである。



 彼の知っている或るフィレソツェ人が非常にきれいな細君を持っていた。
この細君にはその尻を追っかけ廻す多くの男たちがいて、中の或る者たちは、大てい夜、習慣に従って松明(たいまつ)をともし、彼女の家の前の路上で、彼らのいわゆるセレナアデを彼女のために奏した。



 夫はなかなかの道化者であったので、ある晩、ラッパの音に眼をさますと、ペッドからぬけ出して、妻と一しょに窓べに来た。



わいわい騒ぎながらふざけ廻っている一団を見て、彼は強い声を張り上げると、


「ちょっと、こっちの方を見てみろ」



と叫んだ。


 この言葉に、すべての人の眼が彼の方に注がれた、すると彼はその身に具わったすばらしく大きなプリヤプを窓のそとに見せびらかしながら、一団の連中に向ってこういったものである。



「もうこれからはしつっこくつけ廻しても無駄だということが君たちにも分っただろう。外ならぬ亭主のこの俺が、家内を満足させるためには、君たちの中の誰一人持たない立派なものを持っていることが明らかになったからだ。従って、もうこれからはセレナアデを奏するなどといううるさい事はやめてもらえることと信ずる」



とこういったものである。


 このふざけた言葉は、果して、男ちの甲斐なき求愛を終息させた。


昭和26・1/ホッジョ・大塚幸男訳「風流道化譚」(鹿鳴社)








2012/12/14 15:50:42|グルメ
さつま揚げ美味ーい

さつま揚げは馬鹿に好きだ。大葉、海老、ごぼう……中に何かを巻き込んだのはとりわけ好きだ。おでんの具としてもいいが、ちょっと炙って食べるのがうまい。


「さつま揚げ」と言ったり、「かまぼこ」と言ったり、店によって(地域によって)様々だ。海から遠くない、昔からの商店街なんかで手作りの店が特にうまいような気がする。後掲の店を見ると例外もあるような気もするが……。地元では、今のところそういう店に気付いていない。


このところ横浜大口通りの能登屋(写真)を食べているが、とても結構。


さつま揚げでこれまで結構だと思った店は次の通り。いろんな時、人の思い出と絡み合っている。


杉並区堀之内 丸佐かまぼこ店
 亡き叔母の思い出だな。
横浜市神奈川区大口通り 能登屋
尾道 桂馬蒲鉾店
 太宰治の結婚の下仲人福山の高田さん夫妻(奥さんは甲府の人だ)同じく福山の井伏鱒二の後輩舘上さん、尾道で詩人会や雑誌「R」をやっている高垣さん夫妻。尾道は鮨も断然うまかった。
奈良餅飯殿(もちいどの)魚万
 奈良に通っていた大昔から立ち食いしたり、土産に送ったりしていた。今じゃ娘夫婦に頼んでいる。「もちいどの通り」という辻の名ももゆかしい。


美味しい店はほかにもたくさんあるに違いない。「薩摩揚げ」「かまぼこ」でここぞという店があったら、是非共、お教え願いたい。








2012/12/13 16:33:00|艶笑譚・世界
グリエルモの立派な道具

 テッラヌオヴァの私の村に、グリエルモという大工があったが、ほかならぬこの男の妻が近所の女たちに証言したところによると、この男は見事な道具を持っていた。
 その妻が亡くなったので、男はかなりうぶな、アントニアと呼ぶ娘をめとった。
 すると近所のおしゃぺり女どもがグリエルモの立派な道具のことを娘に話してきかせた。
 初めて夫と寝ようという晩になると、彼女は非常にこわがっていたもので、ふるえはじめ、敢えて夫に近寄ろうともしなかった。夫はこの小娘の恐怖の原因を察して、こういってなぐさめた。



「お前が人の噂に聞いたことは本当だよ、だがね、おれはニつの道具を持っているんだよ、大きいのと、小さいのとをね。
 まず手はじめには小さい方のを使うことにしよう、この方だったらひとりでにはいるからね。そして必要となったら大きい方のを使うんだ」



 若い妻は安心したので、大工はその小さな方の道具でもってラチをあけ、事は上首尾にはこんだ。



 ひと月して、小道具の操縦になれた妻は、夫にしなだれかかりながら、こういった。



「ねえ、あなた、どうしてもう一つの方のをお使いにならないの? 大きい方のを?」



 すでにその時までにすぱらしく大きな道具を使っていた大工は、妻のよき意図を笑わずにはいられなかった。
 私にこの話をしてくれたのも当の大工なのである。

※昭和26・1/ホッジョ・大塚幸男訳「風流道化譚」(鹿鳴社)