TVドラマ「平清盛」はそろそろ終盤に差し掛かっているようだ。視聴率が今一つであるようだが、子どもの頃、前九年の役、後三年の役、保元・平治の乱、為朝、弁慶、牛若丸……の戦記物語をワクワクして読んだ私にとっては、格別いやでもない。むしろ懐かしい。だから、たまには、手元の歴史小辞典で生没年や事件の勃発年を確かめたりしながら、日ごろ殆ど見ないドラマを眺めている。
ただし、アメリカ映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」を連想させるような登場人物のやつし方(汚し方)がリアリズムを越えてカリカチュアみたいになっているのが、最初少々気になった。最近では北条政子のなり。清盛はもちろん西行、後白河、頼朝、義経の人物形象もどうかと思うし、清盛が理想の国家経営者のように言うのもどんなものだろうとも。それとも現状からの憧憬か?
ドラマ中、子どもらしい声でしばしば背後に流される唄は、『梁塵秘抄』でもっとも有名な歌の一つである。
遊びをせんとや生(う)まれけん、戯れせんとや生(む)まれけん、遊ぶこどもの声聞けば、我が身さへこそ揺(ゆる)がるれ(359)
集中、これに続いているのが、以前このブログでも紹介した、巫女・傀儡女(人形まわし)の歌だろう甲斐の歌謡である。かなりセクシャルな意味合いと、山間の芸能民の性的なもてなしのニュアンスを感じる歌である。
ただし、後白河法皇がまとめさせた『梁塵秘抄』全20巻はまだ発見されていない。巻一の21首が室町時代の書写、巻二の545首は江戸時代の書写を竹柏園(なぎぞの)佐々木弘綱(信綱父)が持っていたもので伝わるばかりだ。この二か所しか知られていない。後者は明治44年になって発見されたものだ。
だから、甲斐にとどまらないが、全国ところどころの古代・中古・中世の歌謡の全貌は、いまだに分からないのである。
写真:2012.11 河口湖北岸で