新聞、雑誌等に書いたもの、どっかでしゃべったこと、書き下ろし……の置き場です。 主に文学・歴史関係が多くなるはずですが、何にでも好奇心旺盛なので、どこまで脱線するか?!。 モノによっては長いのもありますが、興味のあるところから御覧下さい。
 
2012/06/15 19:24:54|本・読書・図書館
「県立」図書館の役割

山梨子ども図書館の今年度総会に行って来た。8年を経過したこの活動は見事である。今年の講座も充実するだろう。


席上、11月にオープンする新県立図書館の説明もあった。そうして、やはり何時に変わらぬ心配が付きまとった。


新図書館の考え方では、「市町村図書館とのネットワークによる活動」「支援・助言」のニュアンスが薄れているように感じたから、たとえば、山梨県公共図書館協議会の地域資料にかかる分科会、子ども読書にかかる分科会はどうなるのかと聞いてみた。「従来と同じだ」との答え。県立が「県立が要員、経費的に大変なことは分かる。けれども、市町村はなおさらそうなのだ。必要があれば県立が『指導助言』してやるから、何時でも言って来い」的な姿勢をとれば、この地の図書館活動は後退するだろう、県立は積極的に指導力を発揮してほしいと付け加えておいた。


参加者で地域の活動レベルの低下を心配する声は少なくないように感じた。


市・町・村、県はそれぞれ独立した行政体で、互いにお節介を焼くべきではないと言いつつ、実のところ、そんな余裕はないという姿勢が何処かにありはしないか。


国と地方だって同じことだ。いやなことは「国民のため」と言いつつ、地方に押し付ける。








2012/06/14 13:34:11|アート
こころ落ち着くエレジー

画家榎並和春氏から、ブログ4000回記念の版画をいただく。希望者も多い中、当選させてくれるなんて、僥倖としか言いようがない。署名付きである。


思いがけず、とてもうれしくありがたい。


氏への礼状にも書いたが、「エレジー」と名付けつつも諦観のような穏やかさと明るみが漂っている。病後、障害者となった今の自分にはなんとも心強いテーマである。


深沢七郎は、しばしば「最近エレジーになっちゃって」と言っていた。七郎の場合、これは外界との違和感だと思う。


リルケ「ドゥイノの哀歌」はジオットのような薄明と力強さに満ちている。


榎並さんの版画を愛でながら、こんなことを思いついた。


しばらく作品とご無沙汰だった。個展の折にでも、また、拝見したいものだ。








2012/06/07 14:24:07|本・読書・図書館
高校国語部会

現場から卒業後5年か、経っているのに、私でなくともよさそうだが、高校の教育研究会国語部会の総会で講演をした。テーマは「国語科における読書活動をめぐって」という大それたもの。


要約すれば、


いい授業はいい読み手を育てる


逆にいえば、


まずい授業は読書嫌いを育てる


というものだが、案の定、思いあまりて、ことばたりず。恐縮の限り。


元来、話すことは得意ではないのだ。だから文字で読み書きすることを好むのに、と、あらためて思う。


写真は大好きな大木=甲府市総合スポーツ公園(緑が丘)








2012/05/31 13:27:46|民俗・芸能
燃えつくす

吉田秀和が死んだ。98歳。


「名曲の楽しみ」を聴く楽しみにも限りがあった。


唐突にも聞こえる番組のオープニングとぶっきらぼうな曲紹介。「シブンノシ」という言い回しが懐かしい。背中に鎌倉の野鳥の声が聞こえることもあった。告知によれば、あと6回分収録しており、放送するそうだ。聴き納めとして、できる限り聴くつもりだ。


今日放送分(再放送)は次の内容。


「交響曲 第1番 ニ長調 D.82」    シューベルト作曲
                      (26分22秒)
          (管弦楽)チューリヒ・トーンハレ管弦楽団
               (指揮)デイヴィッド・ジンマン
                <ソニー SICC1452>              「交響曲 第2番 変ロ長調 D.125から         
             第1、2、4楽章」シューベルト作曲
                      (29分03秒)
          (管弦楽)チューリヒ・トーンハレ管弦楽団
               (指揮)デイヴィッド・ジンマン
                <ソニー SICC1452>


映画監督・新藤兼人が死んだ。100歳。99歳まで仕事をした。


いずれも燃焼しきっている。脱帽・合掌。


 








藤原庵の山菜

林道を車を走らせるのが好きだ。特にこの時季、両側にそそり立った青葉の壁あるいはトンネルに囲繞される快さは何物にも替えがたい。幸い住んでいる街外れから、さほど時間もかからずに緑の領域に入ってゆける。


気候もよし、久しぶりに黒平(甲府市)の藤原庵に行ってみる。夫婦木神社の脇を入ってゆく行き方と塩川ダムを通り過ぎて入ってゆく道とがあるが、始めて後者で行ってみた。同じようなものだが、この方が距離感は多少短く感じるかもしれない。最近しきりに目撃情報のある(襲われた情報もある)熊に遭遇することもなく無事辿り着いた。


頬に当たる風が、ここではいくらか冷やっこい。浅い谷の向こうの未開すぎるわけでもない、開きすぎたわけでもない山腹の光景が何とも言えない。いつものように気のいい藤原さん。迷ったがほうとうではなく、ざるそばと山菜を頼む。山菜と言っても、イタドリ、ワサビ、フキ、タケノコ、ゼンマイ等などだ。藤原さんの言うとおり「ここのは天麩羅やおひたしではなく、味噌漬け、酢漬け、塩漬けの類なんですよ」。全て藤原さん自身が摘んで処理したものである。承知の上である。塩分こそ罪悪感はあるが、私には好物である。以前のように、ビン詰めで買って帰って、しばらく酒や飯の共にすることだけはやめておこう。


ハエ、アブなんかが多いのを除けば、いつ来ても、まさに気がせいせいする藤原庵である。