1、南口のまちづくりの現状
甲府市は、政治経済をはじめ教育文化などの中心都市として、また、交通や観光の
拠点都市として本県の産業経済の振興に大きな役割を果たしてきたところであります
が、日本経済の成長期がもたらした中心機能の郊外化や分散化の影響を受け、甲府
駅南口を含めた中心市街地の空洞化が顕在化しております。こうした中、近年の南口
は 、全国展開のシティーホテルの開業や新規飲食の出店が数多く見られ、都心として
の賑わいのある状況にあります。この背景として、甲府駅南口は県下最大の交通や観
光のターミナルを擁して交流人口が一日当たり約三万人であることから、潜在的に賑
わい性と界隈性の高い地域であることが要因として考えられます。
一方、甲府市への観光は、年間約950万人にも及んでおり、本県の産業振興に大き
な貢献を果たしているところであります。しかし、これらの観光交流人口を甲府駅一帯
に呼び寄せる魅力的な「まちづくりの仕掛け」が不十分なことから、観光交流拠点として
の地の利が活かしきれていない状況にあります。
2、駅周辺と観光地の連携
甲府は、JR甲府駅やインターチエンジなどの交通施設が配置されて本県の玄関口と
して、交通ターミナル機能や観光ターミナル機能の役割を担っています。 一方、甲府
駅周辺は、ビジネスビジターの受け入れ機能は整備されているものの、観光ビジター
への受け入れ態勢が不十分なことから、甲府への観光ビジターは、昇仙峡や県立美術
館をはじめ武田神社などの遊覧を楽しみに訪れるが、昼食や宿泊をはじめ土産などに
ついて駅周辺での利用が十分なされていない状況にあります。このため、これらの観
光ビジターを甲府に滞在させて、宿泊や昼食などの利用度を上げるための方策が必要
とされるところであります。
山梨県は、先ごろ中心街の活性化を図る観点から、県庁舎のうち県議会棟や県警
本部棟などの歴史的建造物の観光資源化を視野に県庁敷地の公園化構想を打ち出し
たところであります。しかも、甲府市においては、既に甲府駅北口において「歴史物語
都市」を目指して、甲府市歴史公園をはじめ藤村記念館や甲州夢小路など魅力的な施
設整備が計画的に進展しております。
そこで、このような背景を踏まえて県内の景勝地や生産過程などの観光と駅周辺に
相乗効果が得られるような連携の強化を図ることが極めて重要であると思料するところ
であります。このため、観光ビジターのニーズに対応したサービスの提供を図る中で、
本県の重要な交通や観光ターミナル機能を有している甲府駅南口一帯を観光の玄関
口として整備することが肝要であると考えるところであります。
3、南口駅前広場の整備の必要性
甲府駅周辺は、山梨の顔として、また、玄関口として、本県の産業経済をはじめ観光
など様々な魅力を発信する重要な拠点であります。現在の甲府駅の北口と南口の駅
前広場は、昭和61年に実施された駅近代化事業により、本県の玄関口にふさわしい
都市機能と共に魅力的な都市景観として、県民や市民とともに他府県からの来訪者な
どに親しまれて、山梨の発展や地域振興に大きな役割を果たしてきたところでありま
す。
その後、甲府駅北口の駅前広場の整備は、現在、甲府市が実施している魅力的な交
流拠点の形成を目指した新都市拠点整備事業の要素事業として整備推進が図られて
おります。このため、現在施工中の北口駅前広場と南口駅前広場を比較した場合、安
全性や快適性などの機能面と共に景観面において格差が生じております。
しかも、近県との観光地間競争を展望すると駅前広場機能と一体的な観光ターミナル
機能を整備することが、観光立県にふさわしい対応であると考えております。
4、南口のまちづくりの進め方
甲府市の中心市街地における賑わいや求心力の低下は、魅力的なまちづくりへの継
続的な取り組みと共に、郊外に立地した集客型商業施設に対応した中心市街地の活
性化に関する適切な対策が講じられないことが要因として考えられます。このため、南
口や中央商店街の活性化への課題は、郊外型の多様な商業などの魅力と競合しな
い、交流人口を旺盛にする観点から、市内観光の発掘とともに駅前商業の魅力の集積
としてショッピングなどの連携による「新たな交流拠点」の形成を図ることが、南口のま
ちづくりを進めるうえで極めて重要であると考えております。
そこで、南口を本県の観光玄関口として、甲府駅の北口を含め県域に形成された魅
力的な機能と相乗効果や波及効果が得られるように都市間の連携強化や役割分担を
明確にする中で、南口の観光を含めた活性化対策や景観対策、さらに、快適な交通対
策を講じるなど「元気な山梨のまちづくり」を目指して、若者から熟年者まで全ての人々
が楽しめる魅力的な街づくりの推進を必要とするものであります。
5、南口のまちづくりコンセプト
1)山梨の観光・物産など魅力的な観光連携の拠点づくり
⇒「山梨の観光を楽しみ駅周辺で食べて遊び、そして山梨の物産を見て買う」
ことの楽しさの拠点づくり。
⇒山梨の農産物をはじめ様々な生産過程の観光への活用策を創造する中で
産業振興を図る。
⇒山梨の美術館や国宝などカルチャー観光の開発で多様な歴史文化の楽し
みの提供を図る。
⇒観光拠点として観光案内やガイダンス機能の強化を図る。
・観光ナビゲーション(開発)搭載のレンタル車両(バイクを含む)の配備で快適で分
かりやすい観光の提供を図る。
2)こうふの「観光・歴史」「食べる・遊ぶ」「ふれあいとまなび」そして「ショッピング」の
拠点づくり
⇒高いポテンシャルを持つ市内観光(昇仙峡・武田神社・美術館等)と駅周辺の諸
機能(市内観光の開発を含む)の連携による滞在型の観光のまちづくり推進で中
心市街地の活性化を図る。
⇒駅北口は、甲府市歴史公園・藤村記念館・甲州夢小路・県立図書館を始め、山
梨文化会館・NHK甲府放送会館など甲府市の「歴史・観光・文化・情報などの
知のモール街」の形成に向けて着々と整備が進められている。これらの交流系
の諸機能と駅南口の飲食など様々な商業との連携を図り駅周辺の回遊性を高
め中心市街地の活性化を図る。
⇒地元商店街と有名ブランドデパート2社の連携によるショッピングスクエアの形
成で魅力的な商業の展開により中心市街地の活性化を図る。
3)甲府駅は鉄道・バスによる公共交通の最大結節点であることから、この優位性を最
大限に活用した拠点づくり
⇒JR甲府駅は、県下最大の公共交通(鉄道・バス)機関の結節点である。
⇒現在、北口駅前広場の整備がすすめられている。南口も北口と同様な人工地
盤を前提とした快適な歩行空間の確保で魅力的な交流拠点の形成を図る。
⇒コンパクトシティーや低炭素社会への対応した街づくりへの志向から、自動車へ
の依存度の大幅な低下が予測される現在、中心市街地への集客力向上を目
指す一環として、鉄道利用補助券の発行や小型バスの多目的運行等の社会
実験を実施し、公共交通の最大結節点という優位性を最大限に活用した拠点
形成を行う。