いやあ、師走に入った途端に、寒い日が続きます。 皆さま、体調管理にはくれぐれも、お気を付け下さい。 かなりご無沙汰の更新であります。 何卒、ご容赦下さい。
さて、当方が講師に赴いている、 妙高の専門学校の、後期の担当授業が始まりました。
その一つに、一年生ほぼ全員と、 野生生物保全学科の2年生が受講する、 『フィールド観察』の、授業があります。
昨年までの後期授業の内容は、 10月に干潟に近い環境での、 ベントス(底生生物)調査を行って居りましたが、
今年度は、兼ねてより実施を熱望していた、 日本海への鮭の遡上の観察授業が、 その川の漁業共同組合様のご協力により、 ついに実施できる運びとなり、 11月21日の金曜日に、念願が叶いました。
ここでは敢えて、K川と記す事に致します。 K川は、学校から1時間程で到着できる川なのですが、 毎年、この川へ多くの鮭が、 長い旅の終焉を迎える為に、帰って来る母なる川です。
現地に着いて川を覗き込むと、 もう既に鮭の姿を、たくさん見る事ができました。 母なる川へ戻って来る目的は、ただ一つ。 そう。産卵して、種の命を繋ぐ事―。
只それだけの為に、ここへ帰って来るのです。 そして、産卵を終えると、 鮭は、全ての力を使い果たし、一生を終えるのです。
しかし、そんな鮭の生態は知ってはいても、 なかなか間近で、その姿を見る事はできませんから、 自分も含めて、大半の学生も、先生も、 初めての体験です。
川底には、既に命絶えた個体が、 静かに身を横たえていたり、 またある個体は雌に追尾して、 産卵を促したりしている光景が、 直ぐ目の前で展開されている様は、 只々、神々しくて、涙するほど神聖な姿です。
自分も学生達に、状況を説明しながらも、 目はその姿に釘付けでした。
暫く、そんな姿を観察した後、 漁協の方達が川に入り、投網で鮭を捕獲する、 『鮭漁』を、見せて戴きました。
但し、ここからが大事なのですが、 川で鮭を採捕する行為は、 国の法律である『水産資源保護法』や、 都道府県の条例である、『(内水面)漁業管理規則』で、 厳しく禁止されている為、 一般の人は、絶対に採捕してはならないのです。
このK川の漁協でも、 採捕を許されている方は、僅か10名なのだそうです。 当然、命絶えた個体であっても同様で、 違反すれば、罰金や、懲役刑も適用されます。 知らなかったでは済まされないので、 釣りなどで採捕する事は、 それが『調査』として、 認められている河川以外では、 絶対に慎んで下さい。
さて、網を打つと、早速、 2尾のつがいが掛って来ました。
雄は体に婚姻色が浮き出て、 皮は硬く黒ずんで、上あごが下あごに被さる、 いわゆる「鼻曲がり」に、なります。
雌のお腹は、ぷっくりと膨らんで、 その中に、いっぱいの卵(イクラ)を抱えています。
やはり、種を永久的に保存、保全していく為には、 全て自然の力だけでは、 余りに天敵が多すぎて、難しいのです。
人が関わり、管理することで、 鮭は守られ、また再び、この川で生まれ、 この川へ帰って来るのです。
鮭の旅は、おおよそ四・五年なのですが、 中には、七年もの歳月を経て、 戻って来る個体もあるそうです。
K川を出た鮭は、日本海を北上し、ベーリング海に達し、 そこで、体力を蓄えながら、 母なる川へ戻る事に備える訳ですが、 海洋部では、当然「鮭漁」は、認められて居り、 母川回帰率は、僅か0.3%なのだそうです。 単純に、1000尾居て、3尾しか戻って来れないと云う 正に命がけの旅であり、 今日ここで観た鮭たちは、そんな凄い旅を、 この母なる川で終えるのです。
悠久の昔から変わらない、この自然の営み―。 そして、それを支え、保全する人間―。 こうして、命が次の世代に繋がって行く事を、 正しく実感できた授業となりました。
次回は、種苗を守る為の、 K川の漁協の取り組みなどについて報告致します。 暫し、お待ち下さい。
写真は上から、 1枚目・・・母なる川に戻って来た鮭たちの姿、 見えますか?
2枚目・・・鮭の採捕 (投網が広がっています)
3枚目・・・採捕された個体 上が雌。下が雄
4枚目・・・目の前で繰り広げられる雄姿に皆、感動!!
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