旧末吉小で、 まだ班での話し合いを続けていた4班より先に、 難所の登龍峠の展望台に辿りついたのは、 ありちゃんが引っ張る3班でした。
道覚えに自信が持てなかった昨年とは違い、 確実に着実に、ゴールのBCへ近付いていました。 しかも、3班全員が笑顔です。 途中のトラブルも殆どなく、 自信に満ちた顔で、余裕すら感じる歩きっぷりです。
午後2時を回って、 俄かにBCでは、ゴールの準備が始まりました。 パトロールに出ていた指導者達も、 BCに戻って、帰着を待ちます。
そして、 ついにもう直ぐ到着の知らせが舞い込みました。 先頭は、予想通り3班です。 子ども達の声が、どんどん近付いてきます。 カウンセラーのMさんもソワソワ・・・
ゴールのゲート下に、テープを張って、 見事にそのゴールテープを笑顔で切って、 3班がBCに戻って来ました!! みんな、とびっきりの笑顔で、 お互いを讃えあっています。
男子も女子も関係なく、手を叩き、 雄たけびをあげたり、感謝の言葉を口にしていました。
「今回は、自分自身でリーダーになったね。」 ありちゃんに握手を求めて、健闘を讃えました。 思えば、一度内定したリーダーへの採用を、 個人の事情と云う事で、 辞退を申し出て来たありちゃんでした。
でも、その辞退が本意でない事は、 鼻から分かっていました。
最初に採用が内定となった時、 明らかに彼女は、喜びに浮かれていました。 このままでは失敗する―。
昨年のありちゃんは、 自分からリーダーになれた訳ではなく、 肯定的なメンバーに支えてもらえて、 リーダーにしてもらいました。
では、どうしたら自分からリーダーになれるのか、 内定したタイミングで、 彼女にそれを考える様に課題を出しました。
どんな的外れな答えが返って来ても、 そのまま採用するつもりでしたが、 返って来た答えは、リーダーを辞退したい―。 そんな急転直下の答えでした。
きっと自問自答しても分からなかったのでしょう。 変な答えを返せば、きっとタイソンに叱られる・・・ そんな気持ちもあった様です。
「自分のメンタルのキャパを越えてしまった・・・」 そんな風に、自身で理由を説明しましたが、 直前で、うまくいかない状態に、 気持ちが支配されて、 怖くなってしまったんだと思います。
そんな弱い気持ちに陥ったありちゃんに、 もう一度、「一緒にやろう」って、 声を掛けてくれたのが、誰あろうアヤでした。
思いだけで突っ走るありちゃんと、 全体を冷静に見て、確実に成果を出すアヤとでは、 180度、支援のスタイルが異なっていました。 でも、アヤはそんなありちゃんの真っすぐさを、 誰よりも羨ましく思っていました。
だからこそ、タイプが真逆の二人が揃えば、 きっとお互いにいい支援ができる―。 そう信じて、ありちゃんに改めて、 声を掛けてくれたのでした。
そのありちゃんが、どの班よりも先に、 踏破を全員でやり遂げたのです。 昨年は、失敗する事を怖がって、 声は掛けるが手を出せない―。
じゃなく、自分も失敗ばっかだから、 一緒にやろうよ。って、気持ちになれたからこそ、 班に肯定的な雰囲気が生れ、 気が付けば笑顔に満ちた班になれていました。
Mさんのフォローがあったからこそでしたが、 その答えを自分で見つけた事が、 自分からリーダーになったと云う事でした。
ゴール後の帰着式も、笑顔は絶えませんでした。 頑張った3班に拍手です。ありちゃん、オメデト!!
その後、次々に各班が帰着しましたが、 自分がゴールの瞬間に立ち会えたのは、 この3班のゴールだけでした。
なぜなら、 1班のアヤが大幅に遅れてしまっていたからです。
1班の抱えている問題は、 なかなか、子ども達にとっては難題でした。 かけがえのない1班になる為には、 どうしても乗り越えなければならない「壁」でした。
制限時間の午後8時に間に合わせるには、 別の支援が必要だと云う事になり、
島経験が豊富な自分がタイムマネージメントしつつ、 何とかゴールに導いてあげようと云う事になり、
ありちゃんのゴールを見届けて、 アヤの1班の支援のために、車を走らせました。 |